もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら まとめサイト


373 ◆lnWmmDoCR.氏  『ガンダムSEED D CCA』

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ベルリン…深夜、郊外の寒空の下運搬車の傍らに二人の男いる。

「どうした?眠れないのか。明日はもう宇宙だぞ。早く寝ろよ。」

その呼びかけにもう一人の男は答えはしない。話し掛けた男は構わず話しつづける。

「ったくホントにこんなモンが役に立つのかよ。」

と言って運搬車の積荷を見上げた。近くで見ると馬鹿みたいに大きい。

「ミューディが犠牲になった価値があんのか!こんなモンに!」

といって運搬車にこぶしを打ち付けた。それを静観している男に対し不満を募らせながら更に続ける。

「お前はなんとも思わないのかよ!」

ずっと沈黙していた男はやっと口を開いた。

「…感情を抑えられない兵士は死ぬのみだとラボで教えられなかったか?」

「ちっ…おまえはいつもそうだな!自分は関係ないって顔しやがって!」

そう言うと男はその場を離れた。残された男は夜空を見上げた。郊外で明かりも殆ど無い上に空気が澄んでいてやけに星が
きれいに見える。男はその後もしばらく星を見上げていた。


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翌日、ミネルヴァ艦内に緊急暗号文が入りタリア、アーサー、アムロ及びアスランがブリッジへと入る。
するとすでに暗号を解読したメイリンがそれを読み上げた。

「ユーラシア中央に地球軍が進行しすでに3都市が壊滅!ザフト全軍は非常体勢を取れとの事!」

それを聞いてタリアが

「また地球軍!?3都市を壊滅ってなんて事を…!そんなに目的地までは遠くないわ。本艦は至急ベルリンへと向かう!
ブリッジ遮蔽、コンディションレッド発令!パイロットは搭乗機にて待機!なにがあるか判らないわ。気をつけて!」

と怒りを露にしながら発令した。
アムロ、アスランはブリッジを出てデッキへと向かう。ザク二機は修理が出来ず出撃できない。アスランはセイバーに向かうところをヨウランに止められた。

「アスランさん、セイバーの出撃は無理ですよ!」

「何?修理は終わっているんじゃないか?」

セイバーは確かに頭部がちゃんと乗っかっている。はたから見れば万全と言える状態である。しかしヨウランが説明した。

「いまはホントにのっかてるだけなんですよ。コネクタなんて一本も繋いじゃいないし出撃はまず無理ですよ。」

「なら今から繋ぐんだ。」

「無茶言わないで下さい!繋いだとしてもセンサー類のシビアな調整が必要なんです。それくらい判らない訳じゃないでしょう。調整なしでは下手すりゃ
自分から弾に当たりにいくMSになる可能性もあるんですよ!そんなMSに人を乗せるなんて出来ません!」

アムロがアスランの肩を叩く。

「アスラン、もう止めるんだ。気持ちはわかるがメカニックに負担をかけているのは俺たちが機体をうまく使えていないからだ。これを見てみろ。」

といいアムロはヨウランの工具箱からスパナを取り出すとアスランに渡した。スパナは錆びたりはしていないが傷がかなり入っている。

「これはヨウランがディオキアで買ったものだ。まだそんなに長く使っているわけじゃないがもうこんな状態になっている。それだけ俺たちがメカニックを使っていると言うことだ。
判ったなら今回は俺たちに任せるんだ。」


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アスランはぎゅっと唇をかみ締めるとデッキから出て行った。アムロがプロトセイバーに乗り込もうとしたときアスランの声がデッキに響いた。

「誰か工具を貸してくれ。俺も機体の修理を手伝う。いや手伝わせてくれ。」

作業服を来たアスランが軍手をしながらそう言っていた。アスランはアムロのほうを見ると少し微笑んだように見えた。

「俺は今やれることをやります!隊長、ご無事で!」

そう言うとアスランはメカニックに混じり機体の修理に取り掛かった。
アムロはプロトセイバーに乗り込み体を固定する。そこにメイリンから通信が入った。

「ベルリンの光学映像、出ます。」

と言う声と共にスクリーンに既に壊滅した町並みが映る。その中央には山のように大きいMAがたたずんでいた。

「なんて事だ…何がしたいんだこいつらは!」

流石にアムロも驚きと憤りを隠せない。そこに更にタリアから通信が入った。

「アムロ、情勢はかなり混乱しているわ。駐留軍も既に連絡が取れず…現在敵軍とはあいつらが交戦中よ。」

「あいつら?羽付き達か!」

「そう。さすが正義の大天使様ね。困った人を放っておけないらしいわ。でもあくまで第一目標は敵巨大MAよ。敵を間違えないで。」

「了解した。アムロ・レイだ!プロトセイバー、出る!」

プロトセイバーとインパルスは崩壊したベルリンの空へと飛立った。
アムロは目下に広がる廃墟をむなしく見つめていた。何故こんな事が出来るのか。何故そんなに人を殺したいのか。
これでは犠牲となる一般人があまりにも悲惨すぎる。あの時シャアはこれよりもっとひどいことをしようとしていた。だが
奴には信念があった。その信念の行き着く先がアクシズ落としだったのだが目前に迫るMAは破壊そのものが目的の
ようである。それがアムロには理解できなかったしそれが怒りを助長する。必ず止める。そう心に誓った。
アムロ達がMAに接近する。周りにはカオスと赤紫のウィンダムと一般のウィンダムが10機ほど確認できた。ウィンダムとカオスがMAから
離れたと思うとMAは変形しMS形態へと変わる。

「なんだ…?サイコガンダム!?いや似ているだけか…シン!まず雑魚からかたずける。」

「了解!」

シンは返事だけすると既にシンの腕では止まってるも同然のウィンダムを落としていく。アムロもウィンダムを一機落としながらカオスへとビームを放った。
後方からフリーダムと数機のムラサメが接近しているが今は構うことは出来ない。


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カオスはMAへと変形するとプロトセイバーに向けてカリドゥス改とビームライフルを放ちながら接近してくる。カリドゥス改を避け、ビームライフルをシールドで
弾いたプロトセイバーはショルダーアーマーからサーベルを抜くとカオスを待ち受けた。ビームクロウが開きプロトセイバーに掴み掛ろうとする一瞬を見切り
アムロは間合いぎりぎりで避けると片側のビームクロウを切り飛ばした。しかしカオスのパイロットもなかなかやる様で体勢を崩しても追撃されないように
ビームライフルを撃ち間合いを取る。そのうち一発はプロトセイバーの可動翼をかすめた。
次の瞬間、巨大MS(以降デストロイ)の胸部が赤く光った。フリーダムのパイロット、キラは後方のムラサメに

「来ます!避けて!」

と言うと回避行動に移る。しかしムラサメとそのパイロット達は何事か理解できないまま機体と共に蒸発した。巨大な三本の閃光はムラサメだけでなくウィンダムも巻き込み
ながらベルリンの街を蹂躙する。
アムロはそのあまりにも無意味なほどに大きい威力のエネルギー砲を見て驚く。街が廃墟になるのも納得できる威力だ。
正直判断を誤ったとアムロは思った。まず止めるべきはこいつだったと。プロトセイバーを方向転換させるとデストロイへと向かった。
デストロイをビームライフルの射程圏にいれると共にビームを放つがデストロイの正面に光の壁ができ、ビームを弾く。壁が消えると共に
ツォーンMk2を放つがあたりはしない。しかし接近を止めるには充分すぎる効果だ。更に腕部が離れプロトセイバーへと向かってきた。

「こんなものに当たるか!」

と軽々避けるアムロだがその腕部は回避した方に向きを変えると五指からビームが発射される。

「何!?ビット!?いやインコムか!?」

回避できずにシールドで受ける。体勢を立て直すとその腕部にビームを撃つが本体と同じように光の壁に遮られた。

「ちいっ!こっちもか!」

腕部はそのまま本体へと戻り接続され、デストロイはスーパースキュラとツォーンMk2、スプリットビームガンを一斉射撃しようと構える。尋常じゃないプレッシャーを
アムロは感じる。しかしそのプレッシャーは憎悪や殺意、怒りなどから来るものではなかった。

「なんだ…このプレッシャーは…恐怖?悲しみ?助けを求めているのか?」

プレッシャーの向こうにアムロは声を聞いた。

(助けて…もう…いや…死ぬのも…殺すのも…助けて…シン!)

「シンだと?まさかこのプレッシャーの正体は…」

アムロの脳裏に先日シンが地球軍に返した女の子がよぎる。それと同時に一斉射撃がアムロ達を襲う。
回避するがあまりの威力に装甲の表面が融解した。


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「隊長!あいつをどうにかしないと!俺が吶喊します。援護を!」

「まて、シン!あれに乗ってるのは…」

その言葉をシンは聞かずにデストロイへと突っ込む。ツォーンを避けるとビームサーベルを抜きコックピットへと突き刺そうとするが赤紫のウィンダムが接近すると共に
通信を入れてきた。

「止めろ、坊主!あれに乗っているのは…ステラだぞ!」

戦闘中にもかかわらず、シンの思考はしばらく止まってしまった。シンはその言葉を嘘だと信じたかった。ステラがこんなことするはずない。
ステラはもう戦争に使わないという約束を信じたかった。いや、その約束をしたという事実にすがりたかったのだ。デストロイが放つ攻撃を避けながら
シンはそれを嘘と証明するため国際救難チャンネルでデストロイに呼びかけた。

「『ステラ』、この名前に聞き覚えがあるか。もう一度言う。『ステラ』、この名前に聞き覚えはないな!」

(無いといってくれ。いや、なにも答えないだけでもいい。)

シンが望むような返事だったらどんなに楽なことか。しかしその願いはあっさりと裏切られた。

「なんだお前は!私の名前を何故知っている!お前も敵か!ならば落とす!」

その言葉を聞いてシンは頭の中が真っ白になった。すがっていたものが音を立てて崩れ落ちていく。シンは完全に戦意を失った。
そのシンに向けてツォーンが放たれる。アムロはインパルスに体当たりをし強引に回避させると

「何をしている!シン!落とされたいのか!」

と叫んだ。だが返事は無い。

「シン!あの娘の本当の声が聞こえないのか!あの娘はお前に助けを求めているんだぞ!お前があの娘を守るんじゃなかったのか!」

それを聞いたシンははっとする。

(俺じゃないと助けられない…そうだ…俺がステラを守るって約束したんだ…俺がステラを…)

「ステラを守るんだ!!」

そう叫ぶとインパルスのスラスターを吹かしデストロイのコックピットへと張り付き叫んだ。


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「ステラ!俺だよ、シンだよ。迎えに来た!こんなMSに乗ってちゃいけない!」

それを見たアムロはふっと少し笑みを浮かべると赤紫のウィンダムへとビームを放つ。何人たりとも邪魔はさせない。
そんな気持ちでアムロは動いていた。ウィンダムのパイロット、ネオ・ロアノークはそれをかわしながらビームライフルを構えるが
そのビームライフルを落とされた。腰部からスティレット投擲噴進対装甲貫入弾 を取り出すとプロトセイバーへと放つ。
それをシールドで受けたとたんにプロトセイバーのシールドと共に爆散した。

「くっ!やるな…しかしこんなものではやられはしない!」

そう言うとウィンダムにビームを放ちながら接近する。回避しようとするがその動きは完全に読まれており肩、ジェットストライカー、脇腹にビームを
受け、更にビームサーベルで頭部を断ち切られるとそのまま墜落した。デストロイのほうを見ると、シンの説得がうまくいっているのか動きを止めている。

(うまくいってるのか?シン、あとはお前次第だ。)

アムロはカオスへと機体を向けた。一方シンはステラを何とか説得しようとしていた。

「ステラ!思い出すんだ!きみはそんなことをする娘じゃないだろ!」

「なんだと?お前が私の何を知っている!私はお前の事など知らない!私を…私を惑わすなー!」

そう叫ぶとインパルスを引き剥がそうとするが、インパルスは離れない。

「止めるんだ!ステラ!君が俺を知らなくても…俺はステラを知っている!君を守るって約束したじゃないか!」

ステラの体がびくっとするとステラはつぶやくように

「守る…?私を…守る…守る…」

何かを思い出そうとしているようにぶつぶつと繰り返しつぶやくと急に脳裏に鮮明な画像がよみがえる。

(私は…こんな事知らない…だけど…懐かしい?私…守る…守るは…シ…ン?シン…)

「シン!!」

思い出したかのようにステラの顔から険が取れ本来のやさしい顔に戻る。その声を聞くとシンははっとし

「ステラ!思い出したの?ステラ、良かった…」

「シン!シン…!来てくれた!助けに…来てくれた!」

「そうだよ、助けに来たよ!そんなものに乗ってちゃいけない!こっちに来るんだ!」

「うん!うん!」

そうステラはうれしそうに言うとデストロイのハッチを開こうとした。二人が本当に分かり合えた瞬間だった。


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そのときシンの背後にフリーダムが映りステラの頭にネオの声が響く

(『あいつはフリーダムだ。手強いぞ…』『また怖い奴が殺しに来る』)

「あ…あ…い、いや、いやああああああ!!!」

そう叫ぶとスーパースキュラを発射させようとする。

「もう!もう止めろー!!」

サーベルを構え突っ込んでくるフリーダム。

「間に合わない!?」

インパルスでデストロイをかばおうとするシン。

「止めろ!!」

カオスを落としたアムロのその声と共にプロトセイバーがフリーダムを蹴り飛ばす。発射されたスーパースキュラがプロトセイバーの両足を消し飛ばした。
落下していくプロトセイバー。フリーダムも地表に叩きつけられるとそのまま地面を滑る。

「隊長!くっ、ステラ!もう止めるんだ!君はホントは優しい女の子じゃないか!」

「いや!いや!!私を殺しに来る!もう…いやあああああああ」

悲痛な叫びを表そうとするかのようにツォーンとスーパースキュラを発射しようとした時だった。背後から赤黒いエネルギー砲がデストロイの胸部を貫く。
フリーダムが上体を起こしただけの状態からバラエーナを放っていた。悲鳴のような轟音をあげながら倒れるデストロイ。
デストロイのコックピットあたりが誘爆を起こしステラはコックピットから投げ出され脚部に一度あたるとそのまま地表へと叩きつけられた。

「あ?ああっ…何で…何で…ステラはもう戦おうとしてなかった…もうこんなことやめようとしていたのに…何で…何で出てきたー!!」

シンが叫ぶと共にライフルを撃つ。それを地面を滑るように避けながらフリーダムは地表から離れるとAAへと帰っていった。シンはインパルスを立てひざの状態で
着地させハッチを開くとそのままヘルメットを取りながら飛び降りた。気持ちばかりが先走り着地に失敗するシン。顔に擦り傷を負いながらも
ステラへと走り寄り、上体を起こすと呼びかけた。


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「ステラ!ステラ!」

呼びかけに答えるように目を開けるステラ。上体を支えるシンの腕にはパイロットスーツの切れ目からおびただしい出血が伝ってくる。その量はシンにも
ステラの命がもうすぐ尽きるのを判らせるには充分な量だった。

「うっ…シ…ン…ステラ…守る…って」

「ごめん…ごめんステラ…俺、守るなんていいながら…都合のいいことばかり言って…結局君を…守れなかった…」

泣きながら謝るシンの顔の傷をさすりながらステラは

「ううん…シン…来てくれてステラ…嬉しかった…最後に…ヒトに…戻れた…だから」

「ステラ…そんな最後みたいなこと言うなよ…そんなケガすぐ直るって!そしたらさ、また海見に行こう?今度は溺れないように泳ぎ、教えてあげるよ。そして
またあのきれいな夕日を見ようよ。だから…そんなこと言うなよ。ね?」

「うん…そうなると…いいね…また…海…見たいね…」

そう言うとステラは力を振り絞って上体を起こすとシンの首に両腕を巻きつけ抱きしめた。
シンもステラを抱きしめるとステラはシンの耳元で囁いた。

「ありがとう…シン…好き…」

するりとステラの両腕がシンの首からとかれぱたりと落ちる。

「ステラ…?ステラ!!うわああああああああああ!!!!」

シンの叫びがベルリンに響く。はらりと舞い落ちる雪の花たち。シンの顔に当たってはかなく消える。それはまるでステラの
命のように…

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