もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら まとめサイト


373 ◆lnWmmDoCR.氏  『ガンダムSEED D CCA』

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…暗闇の中男は静かに目を閉じていた。
この機体に乗り込んでどれだけ時間がたっただろうか、まだ出撃命令は
降りない。時間が余ると男はふと考えてしまう。
自分は何のためにこれに乗るのだろう、と。そういえば誰かが言っていた。

「殺られるより殺る方がましだ」

と。確かにそうだと男は思う。しかし死ぬというのがなぜ嫌か男はわからない。
ただなんとなくだが絶対に嫌だとしか言い表せなかった。
そういえば誰かが言っていた。

「死ぬのは怖い。死ぬのは嫌」

と。誰が言っていたかは思い出せない。もしかすると最初から誰もこういうことを
言っていないのかも知れない。しかしこの言葉が死への恐怖心をもたらしている
一因となっているようだ。誰が言っていたか思い出そうとするとこれ以上考えたくなくなる。
自分が分からなくなる感覚に男は少し戸惑った。そのときだった。

「どうした、一号機。脳波が乱れている。」

いやな奴だ。頭の中までのぞいていやがる。そう思い、呼ばれた男は沈黙で答える。
遠方で轟音が聞こえた。そろそろ出番らしい。目を開けると男は強く言い放った。

「X1デストロイ、起動。一号機、出るぞ!」

自分ですら自分のことを一号機と呼ぶ。男は忘れていた。かつて男はスティングという
名を持っていたことを…


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その少し前。
ミネルヴァはアイスランド沖に停泊していた。タリアは少しため息をつくように息を
はくとふと横を見た。視線の先にはプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルがいる。
厳しい視線の先にはモニター越しに地球連合の基地、ヘブンズベースが映っていた。ヘブンズベースに逃亡した
ロゴスのメンバーの引渡し要求の回答期限まであと五時間。
デュランダルは独り言のようにつぶやく。

「やはり無理か…」

しかしその言葉はブリッジに届くには十分な大きさで発されていた。
ブリッジ要員の視線がデュランダルに絡みつく。だがその視線をいちいち気にする程
デュランダルは余裕を持っているわけでは無かった。
回答期限を与えたと言う事は相手に時間を与えているわけでありその時間に戦力を用意することもできる。こうして
座っている間にも攻撃が始まるかもしれない。
目の前のモニターから目を離すことはできない。それは対ロゴス同盟軍全ての人間が感じていた。

ミネルヴァのデッキにはアムロたちが待機していた。コンディションはいまだイエロー
だが落ち着いているものなど一人もいない。アムロはνガンダムのコックピットに早々と
入ってしまい、シンはデスティニーの足元でうろうろとしている。アスランもコックピットで忙しく設定を見直しては確認、
手直ししては元に戻したりし、ルナマリアはまだインパルスに慣れていない事もあり整備員から確認事項を聞いて
イメージを沸かす。普段から落ち着いているレイでさえ、水を飲む回数が増えている。
アムロはコックピット内で指を組んだまま人差し指をとんとん、と動かす。ふとその行動を止めるとブリッジに回線を開いた。

「艦長、すいません。そろそろコンディションをレッドに移行したほうがいいと思うんですが。」

タリアが突然の通信とその内容に少し驚き答える。


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「まだ回答期限まで五時間もあるのよ?今から入れ込んでいざと言う時に使い物にならなかったらどうしようもないわ。」

「相手が攻撃してくるにしても回答期限が切れると同時にしてくるはずがありません。
彼らは追い詰められているんですよ。周りを敵に囲まれて。」

「じゃあ聞くわ。逆になぜ"今"なの?」

「…勘というかいやな感じがする。悪意がこちらに向いているのが強くなった気がする。」

「!?勘ですって?そんな不確定な事で」

そこで声を遮る者がいた。

「待ってくれ、艦長。」

タリアの言葉の途中でデュランダルが会話に入ってきた。

「アムロ、悪意が強くなったといったが君は何かを感じ取っているのかね?」

アムロはデュランダルに少し警戒心を持ちながら言葉を選ぶようにして話す。

「ええ…ここに来た時からプレッシャーは感じていたんですが、先ほどからそれが急に
強くなった気がするんです。感覚的なものなんで、他の人に理解してもらうのは難しいと
思うんですが…」

「そうか…分かった。艦長、コンディションをレッドに移行しMSをいつでも発進させられる様にしてくれないか?」

「え?あ、いえ、議長がそうおっしゃるなら結構ですが…なにか根拠でも?」

「いや、根拠というか…ほら、勘というものは経験と知識に裏付けされているともいうしね。とにかく頼むよ。」

タリアは仕方なさそうに艦内放送のスイッチを入れた。真意はともかく、議長の命令なら
どうしようもない。


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ミネルヴァ艦長、タリア・グラディスです。引渡し回答期限までまだ時間はあるが
本艦はこれよりコンディションレッドに入る。パイロットは搭乗機にて待機。
ここでロゴスをたたければ和平に大きく近づくわ。各員の健闘に期待する。」

そういうとメイリンがコンディションレッドの発令を繰り返す。

「コンディションレッド発令、コンディションレッド発令、パイロットは…」

そこにブリッジ要員のバート・ハイムの声が響いた。

「基地方向よりミサイル群接近!!」

いつものようにアーサーが大げさに驚く。周りの人間はそれに慣れっこになっており
それに対して誰もリアクションを行わない。議長とタリアが同時に

「来たか!」

「来たわね!」

というとバートがさらに続ける。

「地下よりさらに熱紋多数!MSのようです!数は多すぎて断定できません!」

アムロが通信を入れた。

「艦長!後手後手になる前に出る!」

それ見ろ、という表情でタリアを見る。タリアはそれを了承するしかなかった。

コックピットのアムロはMS隊に通信を入れる。

「シン、アスラン、ルナマリア。君らが先行してくれ。後方から俺とレイが付く。
味方の通る道を開くぞ。ルナマリア。空間戦闘では下からの攻撃もあるぞ。気をつけろ。
よし、いくぞ!!」

そういうとデスティニーを先頭にカタパルトへと向かった。


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デスティニーがカタパルトへと乗ると、シンは

「ロゴス…もうあんなことが無い様に…マユや…ステラのようなことが無いように
俺はお前らを潰す!徹底的にな!」

と自分に言い聞かせるように口に出すと

「シン・アスカ!デスティニー行きます!」

いつも通りに発進する。

「アスラン・ザラ、レジェンド、出る!」

レジェンドが出ると続いてセイバーがカタパルトに乗る。

「隊長、ではお先に。」

それだけいうとレイはセイバーをカタパルトに載せ発進し直後にMA形態へと変形させ、ミネルヴァの周りを飛ぶ。

「アムロ・レイだ。ガンダム、出る!」

カタパルトから射出されると軽くスラスターを吹かし高度を調整する。後方から飛んできたセイバーの背中に乗る
とそのままヘブンズベースへと向かっていった。

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