もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら まとめサイト


その他    224 ◆pIB8vox7Ug氏  『beyond the space-time』

【2006/09/24、25】

(…何処だ此処は…、そうだ!落下は阻止できたのか?)

分断されたアクシズの片割れ、それを押し返すべく全力を尽くしたアムロ・レイの記憶は視界を緑の光に
覆い尽くされた時から途切れていた

(地球は、地球はどうなったんだ?)

霞む目を必死に凝らすと無傷の青く輝く地球が見えた

(無事か、俺達のした事は無駄ではなかった…)

薄れる意識で、ともにアクシズを押し返した敵味方のパイロット達、力を貸してくれた地上の人々を思う

(人にはあんな奇跡を起こす力が有る、もう僕の存在も無くてもいいだろう…)

満足げに微笑むと意識を手放した

(…最後にホワイトベースが迎えに来てくれる…なんて…ね…そう…だ、帰ろ…あ…場所…)

大空を翔る天馬のごとき艦が、意識を無くすアムロが最後に見たものだった



「意識は無いみたいだけど注意して運んで頂戴」

気を失ったパイロットを担架に乗せて運んでいく衛生兵にそう声を掛けるとマリュー・ラミアス技術大尉は
目の前に横たわる大型のMSに向き直った
どうにか崩壊したヘリオポリスを脱出し軍事衛星アルテミスへと進路を定めたアークエンジェル、その
進路上に漂う一体のMSがあった
外見がGAT-Xシリーズに酷似していたためまさかと思い回収しては見たがまったくの別物なのは艦内に
収容した時点で分かっていた、大きさがまったく違う、少なくとも大西洋連邦ではこのような機体のことは
噂に聞いたことも無い
機体を登るとコクピットに入る、球状の空間にシートがアームに支えられて浮いていた

「おそらく全周囲モニターね…、」

シートに付くとコンソールを操作し手元にあるサブモニターに目を落とす

「操作周りの洗練度が洒落にならないわね、私達より相当先に進んで…核融合?どうしてこんなものが存在するの!?」

機体の基本スペックを見て驚愕の声を上げたマリューは続いてパイロット個人情報を確認してみる

「地球連邦新興外郭部隊、ロンド・ベル所属アムロ・レイ大尉か…」


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「なあ聞いたか?あのMSのパイロット生きてたらしいよ?」
「へえ、そいつは良かったな、それ「ちょっとォ、何の話よ?」

食堂からの出前のスポーツドリンクを渡しながら話しかけてきたカズィ・バスカークにサイ・アーガイルは
質問を返しかけた、が、回収されるところに居合わせなかったミリアリア・ハウに遮られた

「さっき回収されたMSのパイロットが生きてたって話さ、ねえ曹長」
「こら、お前に一通の事をマスターして貰わんとオレがまともに休憩取れないんだからな、ちゃんとやってくれ」

余所見をしたトール・ケーニヒの頭を小突くとアーノルド・ノイマン曹長は重々しく言った

「まあ、戦えるのがキラと大尉だけなんだからな、戦力になってもらえるならありがたいよ」

ノイマンに答えて口を開こうとした皆を硬い声が制した

「お前たち、お喋りはそれぐらいにしておけ」
「はっ、申し訳ありません」
「「「「………」」」」

すぐに詫びたノイマンと比べるように一斉に黙りこくった学生達を見回したナタル・バジルール少尉は説教を始めようと口を開く

「だいた「ナタルここに居たの、ちょうど良かったわ一緒に来てくれる?」

ブリッジに上がってきたマリューはその場の微妙な雰囲気に少し戸惑ったがかまわずに続けた

「カズィ君、フラガ大尉に第…左舷のMSデッキに来るように伝えて頂戴いいわね?」
「ハイ、分かりました」

ブリッジから出て行くマリューとナタルに続いてあわてて駆け出そうとするカズィをミリアリアが止めた

「艦内放送で呼び出せばいいじゃない、アンタどこまでパシリ体質なの?」



廊下に出るとMSデッキへと急ぐ、閉まりかけた自動ドアの隙間からもれる笑い声にナタルは眉をしかめた

「まったく、さっさと学生気分を抜いてもらいたいものですが…」
「仕方が無いわよ、彼らはまだ学生そのものなんですからね」
「しかし、それでは示しが付きません!」
「足りない人手を補ってくれてるんだから、いちいち文句も言ってられないわ、それより」
「あのMSとそのパイロットのことですね?」
「ええ、納得のいかない点が多すぎるの、貴方と大尉の意見も聞いて置きたくて」
「何か問題でも?」
「ナタル貴方、地球連邦って聞いたことある?」


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【2006/09/26】

二人がMSデッキにたどり着いた時、そこでは整備班の長コジロー・マードック曹長が回収されたMSに取り付いていた

「下手にバラして無いでしょうねマードック曹長?」
「こりゃ艦長代理に副長、こっちはまだ開けて見てただけです、坊主がデータの吸出しを始めてますがそっちはかまわんので?」
「ええ、私が頼んだの、フラガ大尉はもう来てる?」
「あっちで坊主が吸い出した戦闘記録をチェックしておられます」

デッキの片隅にあるディスプレイの前でムウ・ラ・フラガ大尉がそれを食い入るように見つめている

「よっ、お二人さん、悪いが先に始めさせてもらってる」

声を掛ける前に振り返りもせずにそう言った、食い入るように見つめるディスプレイの中で
大きな赤い塊と小さないくつかの白い塊が激しく動き回っている、マリューの目にはその様にしか映らなかった

「どうですか大尉?」
「どうもこうも無いね、この白いのや赤いのが敵だって言うならオレは尻尾巻いて逃げるよ、巻いてる暇も無さそうだけどな」
「大尉の腕で対抗は可能ですか?」

ナタルの質問にフラガ大尉はディスプレイからまったく眼を逸らさずにに答えた

「かんべんしてくれ、こんなのと比較されたんじゃたまらん、『エンデュミオンの鷹』なんて雀に改名したくなっちまう」
「すみませんマリュー大尉、データベースらしいソースを見つけたので先に落としたんですけど…」

後ろから控えめに話しかけたキラ・ヤマトはマリューに持っていたディスクを差し出した

「ありがとうキラ君、ナタル、コピーを取ったら大雑把でいいから目を通しておいて、残りは?」
「まだ落としてる最中です、なんとか規格の合う端子があったんですけど古いものなので、あまり軽くなくて」
「分かったわ、もうやることが無いなら休憩してね、アルテミスに着いたらまた忙しくなると思うし…」

マリューは受け取ったディスクをナタルに渡してすまなそうに言った

「はい、それじゃあフレイのお見舞いに行ってから休ませてもらいます」

破損した救命ポッドから助け出された時気を失っていた彼女の意識はいまだに回復していない

「あ、今はちょっと待ってくれる?レイ大尉の事でまだ落ち着いてないから…」
「あの機体のパイロットの人ですよね、レイ大尉って」
「ごめんなさいね、いまのところ接触は最低限に抑えておきたいの、私が見ておくから」
「そうですか…、分かりましたお願いします」
「本当にごめんなさい、後分かっているとは思うけどこの事は…」

言いよどんだ言葉にうなづくとキラはMSデッキを後にした
キラが出て行くと内線の呼び出しが鳴った、ナタルが取る

「ラミアス大尉、医務室からブリッジに伝言、患者が目を覚ましたと」
「すぐ行くって伝えて」


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(…ど…こ…だろう此処は…ララア…、いない…いや、あんなに遠くに…)
(…遠い…僕は…、なんと遠くまで来てしまったのだろう…)
(…こんなに遠いところでも、…人の営みがある…争いも…)

唐突にアムロは覚醒した

「気付かれましたか…しばらくは問題は無いようですね、少しお待ちください艦の責任者が参りますので」

そばに付いていた医務官らしい女性が簡単に診察するとそういって部屋を出て行く
ベットに横になったままあたりを見回す、軍用航宙艦の医務室らしい

「あの世でも夢でも無さそうだな、それにしても…」

今は確かにララアを感じられない、自分がかつていた場所からかけ離れたところに居るのが分かる
さっきは辛うじて感じられたララアの気配を求め集中しようとすると誰かがやってきた

「地球連邦新興外郭部隊、ロンド・ベル所属アムロ・レイ大尉、ですね」
「そうだが、君は…?」
「技術大尉のマリュー・ラミアスと申します、事情をお伺いしたくて、ところで体調のほうは?」
「良くも無いが悪くも無いよ、質問には答えられると思う、ところで…」
「地球なら無事ですわ」
「そうか…、良かった」

最後につぶやいた一言にどれだけの思いが込められているのかはマリューにも分った
目の前に居るこの人物はここでは無いとはいえ地球を救おうと戦った男なのだ
MSそのものとそこからの情報でおそらく、とは思っていたが
この男の呟きを聞いて確信を持った、別の歴史をたどった別の地球が存在しているのだと
アムロは自らの思いに沈んでしまったマリューに気遣わしげに話しかけた

「ラミアス大尉…、優しい嘘をありがとう」
「な、何を仰るんです!」
「なんとなく分るよ、それじゃあ、君の所属を言ってみてくれないか?この艦についてでもいい」

状況を把握される前に少しでも情報を引き出したかったのだが歴戦といっていいこの大尉には通用しなかったようだ

「僕の存在が君達の間でどのように扱われるのかは…、まあ大体想像はつくけれ…っクッ」
「大尉!」

突如アムロを刺すような頭痛が襲った、無意識に受け止めた無数の感情が脳裏に吹き荒れる

(ニュータイプとしての感受性が無制限に拡大している!何故だ?くそっ処理しきれないオーバーフロー

感情の奔流の中、マリュー達の為に役に立ちそうな情報を拾い上げる

「しっかりしてください!」
「いいかい…ラミアス大尉、…君達を…追いかけるもの…と行く手に待ち受けるもの」
「喋らないでください!医務官!早く」
「…悪意が二つ…感じ…られる…気をつけて行くんだ…」


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【2006/10/02】

話は少しさかのぼる
ザフトのヘリオポリス襲撃に伴い]105ストライクに搭乗したキラ・ヤマトは
推進部の壊れた救命ポッドを抱えてアークエンジェルに戻ってきていた
この時、このままストライクに搭乗し戦い続けることになろうとは夢にも思っていなかった
抱えている救命ポッドについて一悶着あった後、二番MSデッキに着艦すると
そこには自らが乗り込むストライクとよく似た大型の機体が横たわっていた

「オゥ、よく無事で帰ってきたな、いいパイロットになれるぞ」
「えっと」
「マードックだ、コジロー・マードック、整備をやってるよろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
「そう硬くなるなよ、みんなお前のやったことを正しいと…、開いたか?」

会話を交わしているうちに救命ポッドのハッチが開けられて中にいた人物が運び出されていた長い赤い髪の少女だ

「フ、フレイ!」
「おや、知り合いか?」

返事もせず慌ててフレイの元に駆け出したキラを笑って見送った

「若いねえ」

さほど多くも無い整備士たちを掻き分けるようにして駆け寄る
すでに担架に乗せられていて簡単な診察を受けているようだ

「すみません!あの…その…」
「知り合いかい?気を失っちゃ居るけど命に別状は無いよ、とりあえず医務室にいくけど一緒に…」

デッキ内にマリューの通りの良い声が響いた

「キラ君、いないの?ちょっといいかしら?」
「…行くのは後回しみたいだな、用が済んだら後でゆっくり見舞いに来るといいよ」

気の毒そうにそう言うと衛生兵らしき若い男は相方とともにフレイを運んでいく

「少し見てもらいたい物があるのよ」
「これは…」

マリューの後からMS中を覗き込んでキラは絶句した
球形のコクピットブロックの内部がほぼそのままのMSデッキを写している
GAT-Xシリーズ(といってもキラが知っているのはストライクだけだったが)が
乗用車の視界を狭めたような代物ならこちらはそこら航空機よりはるかに優れている

「驚いた?全周囲モニターとでも呼べばいいのかしら」
「凄い、連合の技術がここまで進んでたなんて!」
「そう言う訳じゃないの、そうだったら良かったんだけど…」


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【2006/11/04】

「…悪意が二つ…感じ…られる…気をつけて行くんだ…」

誰かの声が聞こえる

(いったいなに言っているの?)

フレイ・アルスターは完全に意識を取り戻した、辺りを見回す
視界はカーテンでさえぎられていたが、聞くことは出来る
盗み聞くつもりは無かったが、そこでのやり取りは耳に残った

(何なのこの人達、それに地球連邦って…何よ?)

騒がしかったがそれも収まり、人が立ち去ったのか静かになった
しばらくしてベットから降りカーテンをそっと引き開ける
少し間を隔てた別のベットの上に男がいた、眠っているよう見える

「あら、結構カッコいい人ね」

横たわっていたのは整った顔立ちの赤毛の男だった、童顔だがそれなりの年齢らしい
うなされて額に汗をかいている、取り出したハンカチで汗を押さえると少し眉間の皺が緩んだ

「ど…こ…、ラ……、」

かすかにうわ言を繰り返している
聞き取る為、体を屈めようとした時、ドアが開いて誰か入ってきた

「フレイ!良かった、怪我は大丈夫?!」
「大丈夫よ…たぶん、貴方も無事だったの」

サイだった、親同士が決めた婚約者とはいえこんな状況での再会は心強い

「うん、ゼミの他のみんなも無事だよ」
「ここはいったい何なの?」
「大西洋連邦の軍艦の中だよ、ヘリオポリスは…プラントの攻撃で砕けてしまって…」
「そんな…」
「そこのお前達、何をしている!医務室への立入は許可を取る様にと言ったはずだ!」
「バジルールさ、いえ少尉すみません、許嫁が運び込まれたって聞いたのでいてもたっても…」
「あぁ、済まない、それは心配だったろう」

許婚と言う普段使われない単語に面食らったナタルは素直にわびた
その様子に気の緩んだサイが尋ねる

「あの、この人ってひょっとして、」
「余計な詮索はするな…」

一瞬のうちに雰囲気を冷たくしたナタルはサイの言葉を遮った

「大尉の事は皆には]シリーズのテストパイロットだと言っておけ、つまらん事を触れ回るなよ」


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