もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら まとめサイト


その他    423氏(2006/10/31)

注意
・少なくとも序盤まで、主な視点がオリキャラ視点となっております。
・他の作品に比べ、CEにアムロが登場するのが若干遅い時期です。
・多少、設定が原作に比べ差異があります。

基本CCAです
νガンダムと同時に量産機もロールアウトしたとお考えください
ただ、非常に少数しか生産されていないので試作機も同然です
原作設定でも量産機の存在はロンド・ベルにガンダム系列の機体を参入させたくない連邦から予算を取るための方便なので
この小説でも量産機とは名ばかりで、実質的にはνガンダムmk2と言えます
ただし、その性能はνガンダムには及びません。νガンダムを十分に扱えるパイロットがアムロしかいないので、オリジナルのνガンダムの同系機を作る意味が無かったのです。
元々はνガンダムの問題点・改良点を調べる為の試作機であり、この機体のデータを元にhi-νが作成されたのですがアクシズ防止作戦には間に合わず、完成間際の状態でコンテナに収納されています。


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紅に発光するアクシズが、朱の尾を引き摺りながら地球へと堕ちていく。
量産型νガンダムのコクピッドのモニター越しに、悪夢と言えるその美しい光景を見ていた男がいた。
男は30代半ばと言った所であろう。男性として最も精気的な年代だ。
その眼光は鋭く、口元は引き締まっており、鋭い刃を思わせるような風貌である。
左目は常に閉じられており、その上から頬にかけて一筋の傷の跡が奔っている。
この傷が男の抜き身の刃の様な雰囲気を、更に強くしている。
「此れ程の事をしてみせる決意とは、どれ程の事なのだろうか・・・・・・」
男―――カーン・ビギナはそう呟くと、目の前の光景を実行したシャア・アズナブルについて、自分がどう思っているのか考えていた。
決して嫌いではない。同じMS乗りとしては間違いなく尊敬はしている。
では武人としてはどうかと言うと・・・・・。
「・・・・・・相成れないな。やはり」
シャアは武人と言うよりは政治家であった。少なくともカーンはそう思っている。
戦う事より裏で奸計を謀っている方が得意そうだ。戦場に立つのではなく、後方の指揮艦から指揮を執る方が似合うだろう。
だが、別にカーンはそう言った者を軽蔑しているわけではない。むしろそう言った能力も必要であり、尊敬に値すると思っていた。
その根底には、自身に無い能力を持つ物を軽蔑する事は、心の弱い者がやる事だという信念があった。
戦う者が要るならば、指揮をする者も要る。兵士が必要ならば、政治家も必要だ。
それにシャアは戦場にも出てくる。その力量と経験は間違いなく自分よりも上だ。
十二分に尊敬するに値する男である。
では何故、カーンはあの男の下で戦っていないのだろうか・・・・・。
カーンは自問してみるが、明確な結論がでなかった。指揮官として認めているのならば、武人としてその下で働ける事は誉れだろう。
その上、シャアは魅力に溢れる男だ。その言葉は自信に満ちており、その一挙一動は躊躇いの無い。
先の演説を聞いた時は、カーンの心は確かに熱くなった。
それでもカーンはロンド・ベルに居場所を置き、尊敬する者の企みを阻止しようとしているのだ。


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カーンは再び自問してみる。果たして自分が何故にロンド・ベルにいるのだろうか・・・・・。
何故にシャアの元にいないのだろうかと言う自問に対し、今度は直ぐに答えが浮かんできた。
ああ、何のことは無い。俺は・・・・・・
「・・・・・・そうか、俺は此方の方が居心地がいいのだろう」
ロンドベルのラー・カイラムの艦長であるブライト・ノア。
隊長であるアムロ・レイ。
彼等が戦っている理由は恐ろしく単純なものだった。
―――己の信念の為に!
ただそれだけだった。そこに政治的理由も金銭的理由も存在しない。
人種も、国家も、アースノイドにスペースノイド。ニュータイプにオールドタイプ。
そういった関係も何も無く。ただ・・・・・・ただ唯一に己の信念に沿って行動していたのだ。
元々、MS乗りとして、そして武人としても二人を尊敬していた。
そんな二人の下で戦士として戦える。カーンは今が間違いなく生涯で最も充実した時であった。
<<−−−小隊長殿?>>
しばしの間、感慨にふけていたカーンは僚機の通信によって現実に引き戻された。
<<−−−大丈夫だ。それより、もうじきブライト艦長から作戦開始の合図だ。覚悟はいいな?>>
<<−−−勿論です!我々は小隊長殿の隊に、入隊した時から覚悟はできております!>>
<<−−−・・・・・・そうか、愚問だったな>>
部下の頼もしい発言に、カーンは一層に気力が増した。
同時に、この素晴らしき若者達に何としてでも生き残ってほしかった。
<<−−−いいか。絶対に生き残れ。お前達はこれから起きる事を伝える義務がある。未来に、歴史に、そして次の世代にな・・・・・・>>
<<小隊長殿・・・・・・。了解であります。ですが、小隊長殿にも生きてもらいます。私達はまだ貴方に教わることがありますから!>>
・・・・・・何と素晴らしいことか。自分が尊敬すべき者の下で戦える事も幸せだが、この様な部下に巡り合えた事も実に隊長冥利に尽きると言える。


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部下の決意に対して、カーンが返信を行おうとしたその時であった。ラー・カイラムから通信が入ったのだ。
<<艦長ブライト・ノアだ。総員配置についたな。これより、5分後の1800に作戦を開始する。>>
<<各自、時計を合わせろ!1755だ。・・・・・・5、4、3、2、マーク!>>
<<・・・・・・皆、よく私についてきてくれた。この戦い、恐らくは多くの者が命を落とすだろう・・・・・。>>
<<だが、あの禍々しい小惑星が地球に落ちたのならば、核の冬が訪れ地球は死の星となるだろう>>
<<それ以上に、今現在に地球にいる数十億の人間の命が散ってしまう!・・・・・・すまんが、皆の命をくれ!>>
この通信に、カーンはブライトの決意を感じた。彼は優しい人間という事には間違いないが、それでも自分が尊敬している歴戦の勇士だ。
必要とあらば部下に死ねと命令する事もできるだろう。そして、それこそが優秀な指揮官なのだ。
半端に人道主義を掲げ、優柔不断な命令をされては人間としては正しいのかもしれないが、軍人としては失格だ。
だが、たとえ頭では理解していても、中々に実行に移せないものだ。
ブライトはその迷いを押し殺し、言い切ったのだ。俺たちに死ねと。
そして言った。命をくれと。
「・・・・・・元よりその覚悟ではできている!俺の命、ロンドベルに捧げてくれようぞ!」
尊敬し、目標でもあった者から共に死んでくれと言われたのだ。武人として、これ以上の果報はない。
だが、血が沸くのを感じる一方で、先ほどの部下の通信が気になった。
作戦開始の待機時間になれば、そう易々と無線は使えない。
仕方が無くカーンは部下への返信を諦め、コクピットに身を沈めてその精神を、戦士のそれにと落ち着けた。
昂ぶりを押さえ、集中し、心を研ぎ澄ませた。その様子はまるで狩を行う前に、身を静めている狼の様であった。
・・・・・・だが、精神を集中させる一方で、カーンは女々しいと自覚していながら部下の最後の言葉に返信できなかった事に未練を感じていた。


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