もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら まとめサイト


その他    953氏(2007/06/17)

「…朝から元気だなぁ」
「夫婦喧嘩は犬も食わないっていいますから」
ニコニコしながら妻は答える。
「おーい、仲がいいのはよろしいがそろそろ行かないとじゃないのか?」
まだ少しあどけなさが残るツインテールの少女は、こちらをギロリと一にらみして自宅を後にしていった。
全く嫌われたものだ…年頃の娘はわらからんね。
自分の頭が『年頃の娘』という40代後半チックなキーワードを使っている事にとハァとため息がでてしまう。
「ミルヒさん!すいませんでした!では行って来ます」
そのやり取りを見ていたのか黒髪の少年は申し訳なさそうに謝り自宅を出て行った。
おうと手を上げ返したものの笑顔は引きつってしまう。

静かになった食卓で少し前の事を思い出す。
「一時はどうなるかと思ったけど、明るくなったな二人とも」
妻は食器をキッチンに持って行きながら過去のことを思い出しているのか少し間がある。
「…ええ。そうね」
少し嬉しそうな妻の顔を見て、直感的に何を思ってるのかがわかった。
「俺はスーちゃん一筋だからな。あんなでかいガキ共の父親になった覚えは無い!」
クスクスと笑っている所を見ると予想が当たったらしい。
まったく。悪い冗談だ。
あんなトラブルメーカー達の父親になった日には胃がいくつあっても足らないだろ。
それに比べて愛娘のスーちゃんはカワイイ!
将来はラクス様より上行くんじゃないか?いや、すでに超えてるかも…
あの寝顔見てたらもう飯が何杯でもいけるね!
「そろそろ時間ですよ」
その言葉で一気に現実に引き戻され時計を見ると、もういい時間だ。
奥のベビーベッドでスヤスヤと眠るスーちゃんにキッシュをして別れを惜しむ。
私は毎朝これほど残酷なことを体験しなければならない。
これで見納めになるかもしれない愛娘を眼球にまなこに心に焼き付けて目をつむる。
「俺は必ず帰ってくr」
「ほーら。早く!」
妻にはこの思いがわからんのか。
無情にもスーちゃんとの距離は離れていき玄関前に押し出されしまった。
ふぅと一息おいて仕事モードに頭を切り替える。
「アリーナ。スーちゃんを頼む。」
「はい。いってらっしゃい。」
笑顔で手を振る妻をおいて仕事場であるドッグへと足を運ぶ。


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私の仕事は『特殊兵器開発2課』である。
特殊兵器といえば聞こえがいいが、用はチューニングとデザインの部署と言ってもいいかもしれない。
隊長機のカラーリングバリエーションを考えたり、出力の測定と調整をしたりと実に地味だ。
最近では、次世代型のMSが作られ始めているせいかこの部署もてんやわんやである。
「ちょっと!全然出力変わってないじゃない!ライフルだって速射性能悪いし…て聞いてんの!?」
ドッグの上を歩きながらカラーリングを考えていると下で高くて通る声が響き渡っている。
いつもの事だ、見なくても誰だかなんていうのはすぐにわかる。
「しかたないよクェス。昨日の今日ですぐには良くなんてできないさ。」
そこへ、緑のMSから降りてきた黒髪の少年がいさめている。
これもまたいつもの光景である。若いっていいねぇ。
するとこっちに気がついたのかこっちを見ている。
「副主任なんでしょ!?降りてきなさいよ!」
見つかったか…。
大体の予想はついている。さらにいつも事ながらクェスが黒髪の少年…ハサウェイに模擬戦で負けたのだ。
クェスはプライドが高いせいか、負けは絶対認めない。大抵はメカニックや兵器開発の者に当り散らすのが恒例行事となっている。

実際クェスは悪くない。むしろ、あの緑色のMS「RGM-89 ジェガン」という機体に対して
ザフトの次世代機として期待が大きいザクウォーリアで対抗しているという事自体すでに神がかってると言えなくも無い。
しかも即死につながるの被弾は今のところ0であり、主な敗因はエンジンのオーバーフローという
兵器開発の者としてはなんとも頭の痛い敗因である。
メカニックもここまで各所関節や操作系配線をズタズタにできるパイロットはいないと苦笑いしていた。
模擬戦の様子をモニターしていた画像を見ていてもこれがザクか?と思うほどの反応を見せている。
一般のパイロット曰く「後ろに目がついてるか、予知能力でもない限り無理な動き」らしい。
よく知られている言葉でいうなら彼女は「怪物」ということだろう。
この『いろんな意味で』怪物が来たのは今から1年前…終戦直前の混沌とした時期だった。


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