――
「う…なんだ?この光は…」
アムロは光の中にいた。アクシズの落下を阻止し、光の帯に連れられ地球から離れていくのは確認できた。
しかしその直後、アムロ自身も強い光の中に包まれた。
それは時間にして数分間に過ぎなかったがアムロには長く感じた。次第に光は弱くなっていき、周囲の様子が見えはじめた。
「…地球は無事なのか?…アクシズは…?」
アムロを包んでいた光が消え、辺りを見渡すと宇宙空間が広がっている。
しかし、アクシズの姿はなく、地球の様子もここからではわからなかった。
ピッ!
「…!ギラ・ドーガ?いや、違う…」
その時だった、近付いてくる機影を確認した。数は3機。
だがそれはネオ・ジオンの主力機体のギラ・ドーガではなく別の機体だった。
ZGMF‐1017…ジン。それはネオ・ジオンとは違う勢力、違う世界のMSだった。
3機のジンはνガンダムを捉えると攻撃体勢に入りアムロに襲いかかった。
「止めろ!もう終わったんだ!あの光を見てなかったのか!?」
攻撃を避けながらアムロは3機のジンに向け言う。しかし当たり前だがジンのパイロットにはなんのことさっぱりわからない。
「なんだ?何を言ってるんだ?」
「そんなことよりアイツを捕獲するぞ。アイツもGの1つか別タイプかもしれん」
ジンのパイロット達はνガンダムを囲むように接近して行った。
「クッ…!こんな時に…止めろぉっ!」
シャアとの戦いで武装がバルカンしか残されていないνガンダムでアムロは応戦した。
1機のジンに的を絞りバルカンでライフルを落とすと、距離を詰めνガンダムの拳で頭部を殴りつけた。
ジンの頭部は脆くも潰され反動で駆動系の一部をやられた様で、動きが鈍くなった。
残りの2機も同様、バルカンで牽制されながら肉弾戦で機体を損傷させられていった。
「クソッ!なんてヤツなんだ…!」
「ここは一度退くぞ!」
駆動系をやられたジンも連れ、3機とも撤退していった。
アムロは彼等がネオ・ジオンのざんだと思って見逃したがこれは後に厄介なことになるだろう。
「退いたか……ん?」
「アムロ…聞こえるか?…応答しろ!アムロ!」
「ブライト達も無事だったか……館長、こちらは大丈夫だ。そちらの位置は?」
「数分もすればそっちに着く。消耗しているだろう?到着するまで待機してくれ」
「…了解、待機する。…ラー・カイラムだって損傷してるだろうに…」
アムロは通信を切った後に苦笑して言った。
ブライト達と合流し、ラーカイラムに帰還したアムロだが今だ状況はわからないままだった。
「地球と連絡がつかない?」
「ああ…」
アムロに問いにブライトが頷く。ラー・カイラムのブリッジルームにクルー達が集まっていた。
「アクシズの落下は阻止したはずだ…」
「我々もアクシズが地球の軌道から離れていくのは確認した。
アクシズは落ちてはいないことは確かだ。あの光によってな…」
「ならばどうして…」
二人の議論が続いた。
しかしいくら議論しても説明がつかなった。
「艦長!レーダーに反応!識別信号は友軍…ジェガンです。」
その時、索敵をおこなっていた通信兵が声を上げた。
「なんだと?数は何機だ?」
「数は3…いえ、待ってください、これは……3機のジェガンが所属不明機と交戦している模様!所属不明機の数は7!」
「所属不明機の識別信号を見せてくれ!」
通信兵が言うとアムロが通信兵の横から覗いた。
「この識別は…さっきの?ネオ・ジオンにしては変だと思ったが…まさか…」
「何かわかったのか?」
険しい顔をするアムロにブライトが声をかける。
「いや、とにかく救援にいくべきだ。使える機体
はないのか?」
「すぐには無理だ…まともに動けるのはνガンダムくらいだが…まだ何も積んじゃいない」
アムロもブライトもただ見守ることしかできないのだろうか。
「く…ラー・カイラムを発進させろ!ただしこちら位置はまだ出すな!」
考えたすえにブライトは発進命令を出した。
「いいのか?ブライト…」
「援護くらいはできるだろう。心配するな、沈めさせる気はない」
ブライトは冗談っぽく笑ってアムロに言った。
数分が経ち、交戦場所に近付いた頃だった。
「…!所属不明機の数は3、ジェガンは3機とも無事です!」
通信兵が戦況を読みあげる。
「持ちこたえてくれたか…しかし、いい腕だな」
アムロが静かにそう呟いた。
「よしっ!射程に入り次第援護射撃!味方に当てるなよ!」
ブライトの指示で半、威嚇射撃に近い形で行った。
所属不明機はラー・カイラムに気付くと劣勢と判断したのか撤退していった。
「援護に感謝する、こちらは地球軌道外輪部隊所属、ユウ=カジマ大佐だ。着艦許可を願う」
ジェガン部隊の隊長とらしい人物が通信をかけてきた。
(地球軌道外輪部隊は私的な妄想ですのであしらかず…後、文が途中で切れてしまいました(_ _)ι)
ブライトは着艦許可を出し、アムロと共にMSガレージでユウ達を出迎えた。帰還した3機中1機のジェガンは損傷は激しいものもあった。
「先程はありがとうございました、ブライト大佐」
「いえ、御無事なによりですよ」
二人は敬礼し、挨拶をかわした。アムロも立ち会い敬礼し、その姿を見たユウはこう声をかけた。
「君の噂は聞いてる、今よりももっと昔からな」
「…恐縮です」
ユウ大佐はフッと笑って言ったがそう言われてアムロはあまりいい気はしなかった。
「さっそくですがカジマ大佐、先程の部隊のことで…」
「……私にも詳しくはわかりません。ネオ・ジオンかと思いましたが違う勢力のようです」
アムロも最初はそう思ったがユウと同じくそう思った。
――
ブライトと達がユウと合流したその頃、衛星軌道上でハルバートン率いる第8艦隊が終結していた。
クルーゼ隊はアークエンジェルを追っていたが友軍機が別の連合のMSと交戦したという情報が知らされていた。
また、ブライト達も衛星軌道上に艦隊が集結していることに後に気付くことになる―
ヴェサリウス艦内、司令室にて司令官クルーゼと艦長のアデスはアークエンジェル追撃準備に入っていた。
そんな時、味方の部隊が【連合のMSと交戦した】と報告があった。
「連合のMS…妙だな」
「まさか他にもMSを開発してあったとは…」
「我々は足つきの追撃が本来の任務だが…放ってもおけんだろう。私が隊を率いて偵察にいく。
アスラン達にはこのまま足つきを沈めるように伝えろ」
「はっ!」
クルーゼが指示をしアデスは敬礼して応えた。
――
その頃ラー・カイラムも第8艦隊の反応をキャッチしていた。
「衛星軌道上に艦隊だと?」
「はい、この反応は戦艦クラスのものです。…詳しい数は不明ですが…」
ブライトが確認するように通信兵に聞いた。
「……我々はタイムスリップでもしてしまったというのか?」
ブライトは困惑した顔をして言った。先程調べてわかったことがこの宇宙の座標が元いた宇宙と全くことなっていること。本来その座標にあるべきものがない。その艦隊がもしアクシズの件で来た連邦軍ならこちらに通信を入れてもいいはずだ。
思いたくはないがここは違う世界と思わざるえない状況だった。
「(もしタイムスリップしたとすればそれはサイコ・フレームの力なのか…?)」
ラー・カイラムもユウ達もアムロと同様に数分の間光に包まれていたという。
もしかしたらみんなを自分が巻き込んでしまったかもしれないとアムロは考えていた。
「いずれにしても…その艦隊に呼びかけてみるしかないな」
「危険だが、こうなってしまった以上仕方ないか…」
ブライトが意を決して言った。
アムロもそれには賛成した。
このままでは両軍から攻撃されかねない。それにどこかで補給も受けなければ長くはもたない
「整備班MSの整備をすませておけっ!いつ戦闘になるかわからないぞ!」
ブライトは整備班にそう指示した。
「使える機体はカジマ大佐の部隊を含めてジェガンが9つか…しかし、パイロットが一人足りないな」
MSデッキに行く整備班の後ろ姿を見ながらアムロが言った。
「…シャアとの戦いでパイロットも数名負傷しているからな。仕方ないだろう。アムロ、MS隊の指揮は引き続きお前に任せるぞ」
「あ、ああ…俺はかまわないが」
ブライトに言われ頷くアムロだが目でチラッとユウのほうを見た。
「…俺のことは気にしないでいい、ここでの隊長は君だからな」
その視線に気付いてユウはアムロに言った。
「…どうも」
短くアムロが言ったが、どことなくアムロはユウが苦手なようだ。同じ上官でも付き合いの長いブライトと面識のなかったユウではやはり違うようだ。
――
そしてラー・カイラムは第8艦隊に向け通信を呼びかけた。
「ザフトの動きはどうなっている?」
「こちらに向け接近して来ます。このままではおよそ1時間もすれば接触します」
「ふむ…引き続き周辺の警戒を続けろ」
第8艦隊旗艦メネラオスの艦長ハルバートンはアークエンジェルを追うザフトを迎え伐つ態勢をとっていた。
「…?艦長、3番艦が妙な通信回線を拾っていると言っています。連邦軍のロンド・ベル隊からだと…」
メネラオスの通信兵が僚艦からの通信を受けた。
「ロンド・ベル…?回線をモニターに回せ」
ハルバートンの指示で正面のモニターにブライトの顔が映った。
「突然の通信失礼します。こちらは地球連邦軍外郭部隊ロンド・ベル、ブライト=ノア大佐です。」
「私は第8艦隊司令、ハルバートンだ。」
艦長同士の対話が始まっていた。ブライトは自分達のことを相手の解る範囲で説明していった。
「つまり君達はアクシズとやらの落下をその不思議な光よって防いだが、またその光によってこの時代に来てしまったと言うのかね?」
「はい…私自信も信じられないことなのですが…」
ハルバートンは聞いた事をブライトに確認した。
「ふむ、簡単に信じれるものではないが…君達がMSを所有しているのなら無視はできないな。…しかし、我々はここでザフトを迎え伐たねばならない。アラスカへ向かってもらうのが一番だろう。アラスカ本部へは私から連絡を入れておく」
ハルバートンは半信半擬な様子だったがMSの力を理解しているためアラスカへ向かうように言った。
「ザフト…?あのMSを持った部隊のことですね?アラスカですか…」
ブライトは聞き返すように言った。
「そうだ。アークエンジェルという艦もアラスカへ向かうために地球へ降下するが…間もなく我々は戦闘に入る。急がねば降下のタイミング失うことになるかもしれん」
「了解しました。我々もそちらへ向かいますので識別に注意してください…では」
ブライトはそう言って回線を切った。
「やるべき事は決まったな」
「ああ…ラー・カイラムの進路を地球、例の艦隊に向けろ!」
通信を切った後、アムロがブライトに言った。
ブライトはラー・カイラムを地球へと急がせる。
アムロは今のうちに自分の機体をチェックしておこうとMSデッキに行ってみるとジェガンの前でメカニック達が何やら話していた。
「このジェガン…通常のものと比べるとスラスター部が強化されてないか?」
「ああ、大佐の部下の話では…大佐用に稼動時間と機動性がカスタマイズされてるんだってよ」
ユウのジェガンの横でメカニックが話している。
ユウは艦長にも関わらず戦闘の際にはMSで出撃することも度々あるらしく、それに伴い長く動けるようにスラスターとジェネレーターの強化により稼動時間が増えている。
ユウは過去にも同じような強化を施したMSに乗ったこともあるようだ。
「……」
アムロは話が聞こえていたが特に何も感じず、MSデッキの奥へと進んだ。
パイロットの技量に会わせて機体を改良する経験はアムロもある。それだけユウの技量が高いと言うことだろう。
アムロは戦闘に備えてνガンダムの調整をはじめた。
――1時間以上が過ぎ、ブライト達が衛星軌道上に到着する頃には既に第8艦隊の半数が沈められていた。
損傷により降下準備に入れなかったアークエンジェルも応急修理が終わり、地球への降下体勢に入っていた。
「クッ…MS隊発進させろ!発進後は艦を囲むようにして守りを固めろ!」
ブライトがMSの発進命令を出した。
「アムロ、νガンダム…行きます!」
アムロをはじめにMS隊がラー・カイラムから次々と発進していく。8機がラー・カイラムを中心にして展開した。
「各機、地球に持っていかれるなよ!」
ブライトが注意するように促した。
「艦長、ハルバートン司令とは繋がらないのか?」
アムロがブライトに通信して聞いた。
「…駄目だ…反応がない」
しかしブライトが呼び掛けても通信は繋がらなかった。既に墜とされたのかもしれない
「…っ!敵!?」
そんな中、アムロはこちら向かってくる敵を感じた。
「そちらから出向いてくれるはとありがたいな。各機気を付けろ、やつらのMSも侮れん性能らしいからな」
ザフトのMSシグーがジンを引き連れて接近してくる。
ザフトの指揮官、クルーゼが自ら出てきた。
「クッ…カジマ大佐!ラー・カイラムを頼みます!」
「了解した、こちらのことは任せてくれ」
アムロはユウにラー・カイラムの守りを任せ、ジェガン2機を連れて迎え討ちにいった。
ラー・カイラムの護衛にはジェガン5機があたった。
クルーゼ率いるMS部隊はジンが7機とクルーゼが乗るシグー1機の編成だ。
「…っ!そこだっ!」
νガンダムがビームライフルでジンの胴を貫いた。さらに間髪をいれず、2機目のジンも同じ様に墜とした。νガンダムはその後も次々とジンを墜としていく。
「速い…!これほどのMSとはなっ!」
圧倒的な力を見せるνガンダムにクルーゼは声を荒げられるずにはいられなかった。
「厄介なMSだなっ!」
「隊長機…!」
クルーゼはνガンダムに向けガトリング砲を射つがアムロは難なくかわした。
「ファンネルッ!」
アムロは残りの敵を一気に墜とそうとフィン・ファンネルを射出した。ジンはファンネルの攻撃から逃れられず撃墜されていく。
「これはあの男のっ…!?クゥッ!」
シグーはファンネルを見て反応して避けるが避けきれなかった2基のファンネルから放たれたビームを受け、機体の右腕をやられ、腰をかすめた。
「…クッ!酷い有り様だな…これは…」
クルーゼは中破した機体を動かし、撤退した。
「……カジマ大佐、そちらの状況は?」
撤退していくシグーを見てアムロはユウに通信した。
「問題ない、ラー・カイラムも無事だ」
「そうですか…今からそちらに…っん?…ブライトッ!ガンダムタイプの機体が大気圏に突入して行くがアークエンジェルはあの艦じゃないのか!?」
アムロは大気圏に引かれて行くストライクを見て通信をラー・カイラムに切り替えた。
ストライクにやや遅れて大気圏に突入していく艦を見た。アークエンジェルだ。
「こちらでも確認した、MS隊、急いで帰還しろ!我々も大気圏に突入し、突入後アークエンジェルと合流する!」
ブライトは帰還命令を出してMSを収容すると突入体勢に入った。
第8艦隊の残存部隊が散り行く中
、ラー・カイラムはアークエンジェルを追って地球へと降下していく。
――待ち受ける地球は宇宙よりも辛い戦いの場をロンド・ベルに用意していた――