ゴォン ゴォン ゴォォン
ここ、戦艦ミネルバの格納庫では先ほどから重低音が木霊していた。
整備員クルーが慌ただしく右に左に動くなか、真新しい二機のMSが鎮座していた。
ザクスプレンダーに強襲揚陸型のウィザードを施した<ノクティルーカ>と、ZGMF−2000グフイグナイテッドに特殊な換装を施した近接格闘・制圧戦仕様の<グフクラッシャー>である。
この二機(と言っても片方は換装パーツのみだが)は実験機的な色合いが濃いのだが、先だってのミネルバの功績が認められてより、こういった機体を回されるようになったのだ。
「やれやれ」
そんな二機を眺めつつ、昼から吐きたくもない溜め息を吐いているのはノクティルーカに換装したザクを見つめるアムロ・レイである。そんなアムロに横にいて仕様を説明していた40近い年齢の整備班長も苦笑を禁じえなかった。
「やっぱりお気に召しませんかい?」
「いや、そういうわけではないが・・・しかしね」
「性能自体は悪くないですよ。整備性も良好だし、少なくともこれからの戦闘は必然的に洋上が多くなりますからねえ」
「わかっているさ、整備長。スプレンダーとの互換性も良好なようだし、性能面ではこれ以上は望むべくもないだろう・・・あくまで水上戦闘に限った話だが」
「…MS戦は考慮しないほうがいいってことで?」
「この武装ではね」
アムロが憂う理由は装備にあった。
ノクティルーカはその殆どを固定武装で済ましている。
脚部スキッドプレートにそれぞれ二基のマーク13ホーミングミサイル魚雷と4発のM25対潜爆雷を搭載(爆雷の撃発深度はコクピットから調整可能)
後は調整されたビームライフルとMSの全長に匹敵する大型魚雷を手さげ式に持つ。
「そういえば大尉は固定武装はお好きではないようで?」
「まあね、僕はMSは白兵戦がメインだと考えている。いざそうなったときに固定兵装が使えなかったり邪魔だったりしたら文字通り無用の長物だ。だから、武装に頼らず機体の性能をベースに上げていくのがベストだと…僕は考えるね」
それを聞いた整備長は珍しく声を上げて笑った。
「はははははっ!!全く持ってズバリな運用論だ。開発部首脳陣に聞かせてやりたい」
「人それぞれさ。だから様々なMSが生まれる…良しにつけ悪しきにつけ、ね」
そこでお互い笑い合う。
「・・・そういえばルナマリアの姿が見えないな」
「ルナマリアですか?アイツは大尉以上に思うところがあるようだから、仕様書を見て喚いてましたよ」
「そうか。まぁ、あとでフォローを入れるとして…あとでもう一仕事頼んでもいいかな」
「了解(苦笑)。またウチの若い連中が鉄球の夢でうなされるな、これは」
そう言うと自分の監督位置に歩き去る整備長。それを見送ると、アムロは厳重に固定してある大型魚雷を見下ろす。
「これは・・・さっさと使うのが賢明だな」
ふう、と一息ついてから、さて…とルナマリアが不貞腐れているだろうミーティングルームに行こうと歩き出した途端・・・
『モビルスーツヲアカクヌレッ♪ ア、ソーレアッカクヌレ♪
セイノウ3倍♪ シュツリョク3倍♪ ナンデモカンデモ♪ アカクヌレー♪』
と、嬉しくて仕方ないといった具合に歌い飛び跳ねながらMS塗装用のコンソールパネルに向かう『赤いハロ』。
「・・・・はぁぁぁぁ」
アムロは本日、三回目且つもっとも長い溜め息を吐くと痛む眉間を押さえながらおもむろに手短にあったスパナをブンっとその物体に投げつけた。
『(キュピーーーン)ハッ!』
それと同時に殺気(?)に気づいたのか、赤いハロの様子が変わる。
『ヤッパリ角ヲサキニホソク・・・<ガンッ!>イテッ』
アムロは避ける気配を微塵も見せずにジャストミートした…してしまった赤いハロを複雑な心情で見つつ、ずかずか近寄るとむんずと掴み上げる。
「なにをするつもりだ、貴様・・・」
『・・・エット・・・ハ、ハロ?』
惚けた振りして誤魔化そうとしているこの丸い物体を海に放り投げたい衝動を抑えつつ、どうしてくれようかと考える・・・その時である。
プシュー
「どうどう?お姉ちゃん!新しい機体ってっ!!」
「全っ然、話にならないわね。論外もいいとこよ。そりゃ、機体の性能はザクとは違うけど…なによ、あのハンマー。
以前のに比べたらピンポン玉もいい所じゃない!あんなのはハイパーとは言わないわっ!大体、インパクトバイスってどう使えっていうのよ、片腕を犠牲にするメリットないじゃない!!」
「え、えぇっと・・・。そ、そうだ!色は赤で良かったじゃない!!指揮官機の証のツノもついてたしさぁ」
「別に…、色にはそんなにこだわってはいないわよ。あのツノだって仕様だし。そもそもなんでツノが指揮官機の証なわけ?あれが折れちゃったら意味ないじゃない」
「わ、私に言わないでよう」
そんな風に話しながら歩くホーク姉妹をアムロとハロの二人(?)は見詰めていたが・・ブチっ・・・と何かの回路が切れる音がした・・・。
『アノガキブッコロシタラァ!!』
アムロの手から抜け出るとハロは猛然と、背を見せるルナマリアに向かってテーーンテーーンと跳ねていく。
「おい、やめないか!大人げ(?)ないっっ!!」
『ウルセー!』
赤いハロはクワッと後ろを振り向くと目?から在る筈のない冷却水をだばだば流しながら叫ぶ
『シルカッツーノ!! ゼンッゼンウラヤマシクネーッツーノ!!!』
そう魂のシャウトをしつつ跳ねていれば当然・・・
ぽに…ぐわしっ!
運が良かったというべきか…赤いハロはルナマリアの<絶対領域>と命名されたミニスカートに包まれた、ツンと上向きなヒップと衝突したわけで……もちろんそんな不届き者を逃すルナマリアではない。
当たった瞬間、その物体を鷲掴み。
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
両者、(*´ -`)(´- `*)こと数秒・・・・、
『・・・ハ、ハロー』
「・・・歯ぁ食いしばりなさい、修正してやるから」
ドカッッ!!! ガンガンガン!!!!
サッカー選手もかくやというほどの見事な蹴りを丸い物体に叩き込むとルナマリアはフン、としてから再びメイリンに話しかける。
「でさぁ」
「だ、だよねだよね!そうだよねぇ!!←(明らかにやりすぎでひいてる)」
一方、蹴られた物体はというと・・・ガンガン!!と格納庫内をバウンドしながら、やがて勢いを弱めセイバーの前にころころ転がった。
『……コ、コレガ…ワカサカ』
そこに機体の整備をしようとアスランがやってきた。
「ン?ハロじゃないか。どうしたんだ?こんなにボロボロになって…」
『……アスラン・ヅラ?』
「……ヅラじゃない、ザラだっ」
どっとはらい
おまけ
ミニスカート
ルナマリアのスカートはミニである。
しかも中身が見えそうで見えない絶妙なラインであるからして、しかも無重力でも中身を見た者はいないというのだから恐ろしい。
中身…つまりナニを穿いているかは妹のメイリンのみとされるほど・・・
それは艦内で<絶対領域>と仇名され、ミネルバの青少年たちを悶々とさせているのだが・・・今日、それを破る者が現れた!
ルナマリアが例のハロを蹴り上げた姿勢はミニスカートでやるようなものではない。
角度によってはばっちり中を拝めるのである。
そしてそんなベストポジションにいた一人の人物が・・・・
「・・・黒の紐パン」
これは、後で<奴>に礼をするべきなのだろうな・・・などと考える30歳のオトコがいたそうな・・・
てくてくてく
「…ねぇ、お姉ちゃん」
「ん?なによ」
「もしかして、狙ってた?」
「ん〜〜〜ん?なんのこと?」
「ううん、もういい…(後でアムロさんに確認しよう)」
別の場所の片隅にて
『<後に↑の行動がメイリンの運命を変えることになろうとは、本人もルナマリアも…そしてアムロも夢にも思わないのだった>・・・・・・フフ、マダオワランヨ』