もしも、CCAアムロが種・種死の世界にいたら まとめサイト


400 ◆4KdCTI1fDY氏  『機動戦士ガンダムSEED side A』

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       ∧_∧     ドンテテッ♪ドンテテッ♪
    .〇ミ( ・ω・ )....〇ミ <機動戦士ガンダムSEED side A 第10話(前編)
  (〇  .〇    .〇  〇)
    〇彡 (    .) ..〇彡
       ∪ ̄∪
    まわして  まわして


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≪コンディション・レッド発令!!モビルスーツ搭乗員は――≫

 ヴェサリウスを旗艦としたザフト艦隊は連合軍第8艦隊を捉え
 戦闘空域にモビルスーツ部隊を送り込む準備を始めていた。

「ミサイル射程距離圏に突入!!発射準備いいな!?」
「対電波粒子、散布!Nジャマー出力上げ!!」

 戦場における標準装備とまでなったニュートロン・ジャマーの登場により
 戦争の形態は有視界・白兵戦闘へと退化していた。
 もっとも、そうなったからこそ防御力・運動性に優れ様々な戦場に柔軟に対応できる
 モビルスーツが戦闘における花形の地位を確立しつつあるのだといえる。
 今、第8艦隊へ向け発射されんとしているミサイルも猛烈な電波障害の状況下にあっては
 誘導など殆ど意味をなさないため、いわゆる撃ちっ放しといった具合だ。

「ミサイル、第一波!テーッ!!」

 ヴェサリウスの垂直発射セルから数発のミサイルが発射される。
 そして、僚艦からもそれに倣ったかのように次々とミサイルが吐き出された。
 第8艦隊へ向けた牽制攻撃である。

≪ミサイル、第二波投入後、モビルスーツ第一波発進。各員の健闘を祈る!!≫

 カタパルトデッキから次々とジンが放出される。
 
「アスラン・ザラ、イージス出る!!」

 共に、GAT-X303 イージス、GAT-X103 バスター、GAT-X207 ブリッツも戦闘空域に突進していく。
 ザフトの主力モビルスーツであるジンを遥かに上回る火力と装甲を持った"G"は
 今回の会戦において先鋭を務める事になるだろう。


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 ――『知将』ハルバートンか。フッ。

 クルーゼは嘲りを含んだ笑みを浮かべる。
 ハルバートンにとっては己が時間と労力を費やして造らせたモビルスーツをザフトに利用され
 自身の指揮する艦隊にその鋭い牙が剥かれるのだ。
 その余りにも滑稽な構図には同情すら禁じえないくらいだ。

「隊長、敵艦隊の動きが奇妙に鈍く感じますな」

 ヴェサリウス艦長フレデリック・アデスの声にクルーゼはディスプレイを見やる。
 ヴェサリウスのディスプレイにはCGによって敵味方の艦艇の位置が表示されていた。
 これは、レーダー、レーザー測量、さらに人の手による光学観測によって得たデータを統合したものである。
 ニュートロン・ジャマーの影響下においては、これだけの手間をかけねば情報分析など出来はしない。
 それでも旧時代のレーダーにすら劣る精度であるのがニュートロン・ジャマー影響下の戦場なのだ。

「鈍い・・・というより艦隊の連動すらまともに出来ていないのではないかな・・・」
「ですが、仮にも相手は『知将』と呼ばれる程の者では?」

 クルーゼの言葉にアデスは一応の慎重論を唱える。
 彼はコーディネイターではあるがナチュラルをむやみに卑下する事は無い。
 この堅実さはクルーゼも高く評価するところだ。

「頭が幾ら動こうが手足が伴わぬのではどうにもならんという事さ。やはり、彼はここで退場という事だな」

≪ブリッジ、こちらカタパルト・デッキ!!≫

 カタパルト・デッキから慌てた声で通信が入る。
 確認すると先の戦闘で負傷したイザーク・ジュールが
 追加武装機構"アサルトシュラウド"を施したばかりのGAT-X102 デュエルに
 勝手に乗り込み出撃しようとしているのだという。

「いかがいたします?」
「汚名返上といった所か・・・かまわん、出してやれ」

 戦力としては確かに有用でもあるし、ここで戦死する程度ならどのみち先はない。
 クルーゼはそう考え出撃の許可を与えた。


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 左右の空域から猛烈な勢いで接近するザフトモビルスーツ部隊は
 第8艦隊からの艦砲射撃を難なくすり抜け空戦隊と戦闘を開始する。

「まずいな・・・」
「ええ、これでは・・・」

 第8艦隊の本陣から離れた場所でその様子を見やるアムロの呟きにイレブンも抑揚のない声で同意する。
 メビウスは防御力・運動性の差からモビルスーツに対して不利であり
 突破され懐に潜り込まれれば艦船なとモビルスーツの良い的である。
 そのため、連合としては接敵前に出来うる限り艦砲射撃によって敵の数を減らし
 その後、モビルアーマー部隊によって突破を阻止するというのが基本であり鉄則である。
 にもかかわらず、第8艦隊から放たれる火線は纏まりを欠きあっさりと接近を許してしまい
 さらに空戦隊を出すタイミングが早すぎたために満足に数も減らせぬうちに交戦が開始されてしまった。
 アムロの予測の中でも最悪の展開だ。

「やはり許可はおりないか?」
「ええ、先程から返答は同じです」
「しかし、このままじゃあ何も出来ないまま全滅するのを見るだけになるぞ」

 アムロの懸念はそれだけではない。
 アークエンジェル補給の隙を突かれたためにメネラオスが収容されていた
 避難民を戦闘前に離脱させ損ねている事も気がかりだった。

「解かりました。再度、打電してみます」

 味方が不甲斐無いだけに止まらずザフトの部隊はクルーゼ隊を含めいずれも精強である。
 損害も殆ど出した様子も無いまま味方のを示すマーカーだけが次々と消えてゆく。

 ――酷い戦況、これならいっそ許可が降りないほうが良いのかも。

 『主任』も一応は申請を続けているが、正直に言えば乗り気ではなかった。
 確かにここでアムロ達がモビルスーツで戦果を挙げればモビルスーツの導入に
 未だに懐疑的な勢力の差し出口を黙らせる事が出来る。
 だが、彼女にはMk-Uとソキウス達の初戦闘にこの戦場はリスクが高く思えるのだ。
 むしろ、ここはハルバートンの不甲斐無い惨敗を記録・報告し反ブルーコスモス派閥の
 発言権をさらに削ぐ事に止め、戦場を離脱するべきではないかという考えが頭をもたげていた。


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「くそっ、なんで当たらねえんだよっ!!」

 ミサイルを容易に回避されメビウスの若いパイロットが毒づく。
 メビウスは最高速こそジンに勝ってはいるもののモビルスーツとの運動性の差は
 訓練生に毛が生えた程度のパイロットではそうそう埋められるものではない。
 直線的な動きはジンに容易く捉えられキャットゥス500mm無反動砲によって爆砕する。
 その様な光景がそこかしこで繰り返されていく内にメビウスは確実にその数を減らしていく。

「邪魔だっ!!」
「うわっ――!!」

 一瞬で三機のメビウスを屠ったアスランはイージスを変形させ
 580mm複列位相エネルギー砲"スキュラ"を放つ。
 直線状に位置していたメビウスは圧倒的な火力に巻き込まれ消滅する。

 ――お前らが、お前らがこんな物を造るから!!

 アスランの精神には怒りが満ちていた。
 今回の艦隊を指揮する男がヘリオポリスのモビルスーツ開発計画を
 推し進めていたと聞いたためである。
 ヘリオポリスでモビルスーツが製造されなければキラと戦う事も無かった。
 自分達の運命の責任がこの艦隊の指揮官にあるという想いがアスランの認識を支配していた。
 無論、これは若いアスランの独善なのだが、同時にアスランに力を与えているのも事実だった。

「敵の艦・・・見えたっ!!」

 四機の"G"は空戦隊を突破し前衛艦隊に向かって飛び込んでいく。
 それぞれに高い火力を有する"G"は艦の装甲を事も無げに貫き爆沈させていく。
 対空機銃もPS装甲の前では意味を成さず彼らは艦砲に当たるほど間抜けではない。
 元々、ナチュラルを上回る能力を持つコーディネイターの更にトップクラスの資質を有する彼らだ。
 "ザフト・レッド"は伊達ではない。

「オオオォ!!」

 イージスのビーム・サーベルがドレイク級護衛艦のブリッジをクルーもろとも焼き払う。
 ビームの超高温の前では人の持つ肉体など一瞬で蒸発するのだ。


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「貴様、俺達の船を!!」

 編隊を組むメビウスからイージスに向かい怒りと共にリニアガンとミサイルが放たれる。

「チィ・・・!!」

 アスランが回避運動をとりビーム・ライフルを向けると同時に
 横手からのブリッツのランサーダートがメビウスを刺し貫く。

「アスラン、油断は禁物ですよ」
「ああ、すまない・・・」

 ブリッツのパイロット、ニコルの声にアスランは自分が熱くなり過ぎている事に気付く。
 そうしている間にアスラン達が戦列に穿った空間に他の部隊のジンも一斉に殺到する。

「ニコル、足付きは見たか?」
「いえ、今のところはまだ・・・」
「そうか・・・」

 もし、ストライクが――キラが出てくれば撃たねばならないのだ。
 アスランは、キラが出て来る事を正直望んでいない。
 だが、それでも、あるいはそれゆえにアークエンジェルの動向が気になっていた。

「アスラン、分かっていると思いますが今回の僕達の任務は敵艦隊の掃討です。優先順位を間違えないでくださいよ」
「ああ、そんな事分かってるさ!!」

 ニコルの言葉にそれだけ言うとアスランは通信を切る。
 ニコルが自分を心配してくれている事は分かっているのだ。
 ヘリオポリスの一件以来どうにも理解に感情が着いていかなくなっている
 自分自身に対してアスランは歯噛みした。

≪イージス、C−16空域が膠着状態です。援護に向かってください≫
「了解しました、援護に向かいます」

 アスランは復唱するとイージスを加速させる。
 眼前には光が明滅している。あたかも消えていく人の命の様に。
 母の悲劇を繰り返さぬため、こんな戦争を一日でも早く終わらせるために銃を取ったはずなのだ。
 なのに戦火は広がるばかりで、ついに連合軍はモビルスーツまで造り始めた。

「まだ・・・まだ戦争がしたいのかっ!!お前達は!!」

 アスランの咆哮とともにイージスは再び砲火の中に飛び込んでいった。


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「クッ・・・イージスにバスター、ブリッツにデュエルか」
「確かに見事なモビルスーツですな。だが敵では厄介なだけだ・・・」

 ハルバートンの苦渋に満ちた声にホフマンは皮肉交じりに答えた。
 四機の"G"に良い様に戦陣に切り込まれ第8艦隊はすでに多大の出血を強いられている。
 さらに戦況がハルバートンのコントロールから離れてしまい統制が取れないのだ。
 いや、正確に表現するならば戦闘が開始された当初から
 ハルバートンの統制など殆ど効いてはいなかったのだが。

「クッ・・・前衛は何をやっているのだ!!これでは撃って下さいと言わんばかりではないか!!」

 ハルバートンはまるでチグハグな味方の動きに激する。
 開戦からの戦闘の経過とともに第8艦隊も当然の事ながら損害が増大し
 兵員の補充、再編成と共に兵の質は著しく低下していた。
 それこそ、開戦時とは比べようもないくらいだ。
 さらに優秀な人員を地球に引き抜かれ訓練もまともに行われなかった新兵を押し付けられた結果がこの体たらくだ。
 もはや連合宇宙軍でまともに機能しているのは最精鋭と謳われる第10艦隊くらいのものであろう。

「提督、輸送艦ブリギッドから再度、出撃の申請が・・・」
「待機せよと伝えておいたはずだ!!以後、ブリギッドからの通信を切れ!!」

 ブリギッドとはアムロ達がコーネリアス級宇宙輸送船を改修して
 モビルスーツ搭載艦としての機能を持たせた艦の名称だった。
 第10艦隊からのドレイク級宇宙護衛艦二隻を伴いアムロ達はこの宙域まで来たのだ。

「提督、ここは彼らに助力を求めるべきではないですか!?
 アムロ・レイと新型のモビルスーツ、精強の空戦隊をこのまま――」
「ホフマン大佐!!君は私にブルーコスモスの助力を求めろというのか!?
 それに君も搭乗員リストには目を通しただろう?私はあんな――」

 ハルバートンの言は三人の、いや、"三体"のソキウスの事を指していた。
 戦闘用に"製造された"全く同一の顔、パーソナルデータを持ちナンバリングされた名称で登録された者達。
 事情を表明的にしか知らなければ、それを利用せんとするブルーコスモス
 ひいてはアムロ達への生理的な嫌悪感を抱かずにはおれないのも無理からぬ事だった。
 そして、その嫌悪感こそがハルバートンの選択肢を狭め最悪の状況へと第8艦隊を導いていく。

 ――だが、このままでは全滅するぞ!!

 ホフマンは内心の焦燥を抑えながらディスプレイに再び目線を戻した。
 一つの選択を自らに課しながら・・・


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 戦況はザフトに優勢のまま推移しクルーゼ等はついに第8艦隊本陣を捉える。

「ハルバートンはどうやら足付きを地球に降ろすつもりの様だな。
 大事に奥に仕舞いこんで何もさせんとは・・・」

 クルーゼは歯応えのなさを多少滲ませながらそう口にした。
 順調に行き過ぎて少々面白みに欠けるのだ。
 そのように感じる事自体が軍人としての救われざる側面なのかもしれなかったが。

「こちらは楽で良いですが・・・ストライクも出てきませんし」
「アスラン達もよく働いてくれているな。アレを造らせた彼はやはり良い将だということだよ」

 クルーゼは痛烈な皮肉を込めて"G"の開発を進めたハルバートンを評した。
 現にアスラン達の働きは見事なものだ。
 アスランは今回の戦いでは今までの鬱憤を晴らすかのようにその実力を十二分に発揮し
 ストライクへの雪辱に燃えるイザークも新兵装をうまく使いこなしエース級の働きを見せている。
 ディアッカ、ニコル両名も彼等程ではないが確実に役割をこなし多大な戦果を挙げている。
 先のアズラエルの懸念は第8艦隊にとって最悪の形で現実のものとなっていた。

「クルーゼ隊長、敵本陣左後方に艦影を確認。予備兵力と思われます。ドレイク級2、コーネリアス級1」
「フムッ、少数ではあるが・・・んっ!?」

 答えようとしたクルーゼだったが急に押し黙り手袋を外した。

 ――なんだ、肌が粟立っている・・・なんだというのだ!?

「ジンを数機、差し向ける事も出来ますが如何いたしますか?」

 言い知れぬ悪寒を感じるクルーゼに怪訝しながらアデスはそう問いかける。

「いや、警戒は厳に行うべきだがこちらから仕掛ける必要はなかろう。
 ・・・下手に藪を突いて怪我をするのもつまらんからな」

 後半の台詞は呟きに近いものでアデスには聞き取れなかった。
 クルーゼの感覚はこの予備兵力から発せられるもの――プレッシャーに敏感に反応し彼に警告したのだ。
 このクルーゼの決断により、結果的にアムロ達は迎撃を口実に使う事さえ封じられた。

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