..∧_∧ ドンテテッ♪ドンテテッ♪
.( ・ω・ ) <機動戦士ガンダムSEED side A 第10話(中編)
(((⊂二 二つ ))
ミノ |
し ⌒J
スクウィィィーーズ!
ついに本陣近くにまで踊りこんだアスラン達はその数に多少足をとられながらも
確実にメビウスを、そして艦艇を屠り去っていく。
「グゥレイト!!数だけは多いぜっ!!」
バスターに向かい一斉に放たれたミサイルをディアッカは弾幕を張って迎撃する。
前方には突出するデュエルが戦艦を撃沈する姿が見て取れた。
その鬼気迫る戦いは流石ではあったが同時に危うさも感じさせるものだった。
「イザークの奴、熱くなり過ぎてないか?まあ、気持ちは解からなくもないけど・・・」
イザークには他の艦隊など眼中にはない。
自分のプライドを傷つけたストライクを葬りさらねば彼の怒りは収まらないのだ。
イザークの憤怒が乗り移ったかのように放たれるビーム・ライフルと
115mmレールガン"シヴァ"によってその火線に位置するものは原型を留めず打ち砕かれる。
「出て来い、ストライクっ!!でないと――でないと傷が疼くだろうがぁ!!」
暴走するイザークの情念は鋭い刃となり艦隊を確実に切り崩していった。
「提督、このままでは――!!」
「アークエンジェルと回線を繋げ!!」
ハルバートンが指示すると直ぐに前面のディスプレイにマリューの姿が表示される。
「ラミアス大尉、貴官等は直ちに艦隊を離脱し降下準備に入れ!!」
「ハルバートン提督!!しかしっ・・・!!」
マリューはその命令に対し思わず反論した。
このまま、第8艦隊を見捨てて逃げ出せというのはあまりというものに感じたからだ。
「ラミアス大尉、事の軽重を誤るなよ。
このままの位置ならアラスカは無理だが連合軍の制空権内に降りられるはずだ。
貴官等は、なんとしてもアークエンジェルとストライクをアラスカへ届けるのだ」
マリューは一息吸って吐くと表面上は迷いを打ち消す事に成功する。
そうしなければ他のブリッジ・クルーに迷いが伝播するゆえだ。
「了解しました。突入限界点まで持ち堪えられればジンとザフト艦は振り切れます」
「よしっ!!限界点まではキッチリ送ってやる」
「はいっ!!」
そうしてアークエンジェルとの通信は切れた。
この遣り取りを唖然とした気持ちで眺めていたホフマンは、
「提督っ!!やはり、ブリギッドに――アムロ・レイ大尉等に出撃の許可を与えるべきです!!」
ホフマンは先程よりもすっと強い口調でそう進言した。
アムロ達は出撃の申請の際に自分達の作戦行動案を提示してきていた。
そしてそれは、今の状況を出来うる限り防ぐための『負けないためのもの』だった。
今となってはそれを使う余地は無くなり、戦う前から軟弱だと断じ
にべもなく却下してしまった自分等の軽率をホフマンは心底後悔していた。
連合の『白き流星』を、同じ旗の元で戦う者達を自分達は信じるべきだったのだ。
「もはや、派閥だ何だと言っていられる段階ではないでしょう!?提督!!」
「この局面だからこそ信に置けぬ者に任せるわけにはいかぬのだろう!!
冷静になって考えたまえ、ホフマン大佐っ!!」
――冷静ではないのはどちらだっ!!ブルーコスモスの、ムルタ・アズラエルへの拘りに囚われているのは!!
G強奪の失態、月で完成されたモビルスーツ、奪われるであろうモビルスーツ開発の主導権。
さらにアークエンジェル、ストライクへの異常とも言える固執。
これらの符号の意味するところをホフマンはようやく理解する。
――提督はもはや正常な判断を失っている!!
己の提案を蹴り残存の艦艇への回線を開くよう指示するハルバートンを尻目に
ホフマンは一人、気付かれぬようにブリッジを離れ第二通信室へと向かう。
最早、一刻の猶予もない――!!
≪総員、大気圏突入準備作業を開始せよ。繰り返す――≫
「おいおい、降りるってこの状況でか!?」
メビウス・ゼロのハッチから半身を出していたムウは思わず
整備要員のコジロー・マードックに怒鳴りつける。
「俺に言ったってしょうがないでしょう!?まあ、このままズルズルよりゃ良いんじゃないですか?」
「いや、けどさぁ――」
「――ザフト艦とジンは振り切れてもあの四機が問題ですね」
尚も納得できずにいたムウの横手から声が発せられる。キラだ。
「坊主っ!?」
「ストライクで待機します。まだ第一戦闘配備ですよね!!」
ムウもマードックも信じられないものを見る目でストライクへ流れていくキラを見やった。
「アイツ・・・艦を降りたんじゃ・・・」
「サイ達も残ったっていうし一体どうなって・・・んっ!?」
ムウはストライクに搭乗するキラの周囲に"赤い影"を見た。
それは、眼を擦るとすぐに見えなくなったがムウに何かを警告しているようにも感じられた。
「どうしました、フラガ大尉?」
「いや、なんでもない・・・」
だが、今はそれについて考える余裕など無くアムロとの接触から
才能の蓋が開き始めている事の自覚も無かったためムウはそれを気のせいだと断じ
今見た"赤い影"――フレイ・アルスターの想念が全ての答えであり
キラを縛り始めている事に気付く事は無かった。
≪アークエンジェル、降下開始!!≫
ハルバートンの声と同時にアークエンジェルの大気圏突入が始まる。
「降下開始!!機関40%、微速前進4秒後に姿勢制御」
アークエンジェル操舵手、アーノルド・ノイマンは慎重に大気圏降下の手順を踏んでいく。
徐々に降りゆくアークエンジェルを確認するとハルバートンは、
≪メネラオスより各艦コントロール、ハルバートンだ。
本艦隊はこれより大気圏突入限界点までのアークエンジェル援護防衛戦に移行する。
厳しい戦闘ではあるが彼の艦は明日の戦局のため決して失っては――≫
この第8艦隊に所属する全ての艦に対しての通信をアムロ達にも聞こえていた。
「この状況で、援護防衛線だと!?間違いなく全滅するぞ!!」
「アムロ大尉!?どちらへ・・・」
歯噛みしブリッジを出ようとするアムロを『主任』が呼び止める。
「Mk-Uで出る!!あの人はどうやら第8艦隊を贄にしようとしている様だからな!!」
「アムロ大尉、冷静になってください!!こうなっては我々は一刻も早くこの宙域を離脱するべきです!!」
『主任』の言葉は暗に第8艦隊を見捨てる事を指していた。
「弁解の余地の無い失態を彼等は犯しました。全滅は彼等の招く結果に過ぎない事です!!
我々は今回、敵対派閥の失態という"成果"を得られたのです。ここで無用のリスクを冒す必要はありません!!」
彼女の言葉はおそらくは正しい。正しさというモノは得てして冷酷に見えるだろう。
だが、彼女がアムロの身を心から案じている事もアムロは感じ取っていた。
そして、それでも許容できそうに無い自分をアムロは自覚している。
「あそこで、もうハルバートン提督の命令だからじゃない。
ただ、生き抜こうと懸命に抗っている――仲間を・・・見捨てる事は出来ない!!」
その直後、メネラオスより通信が入る。
『主任』はある種の予感を感じつつもその回線を繋げるように指示する。
前面のディスプレイにハルバートンではなく副官のホフマンが映し出された。
≪メネラオス副長、ホフマン大佐だ。諸君等もすでに察している事と思うが
ハルバートン提督は第8艦隊を盾にしてでもアークエンジェルを地球に降ろすつもりだ≫
ここでアークエンジェル降下のために第8艦隊はただでさえ崩されている布陣を更に歪めるのだ。
それが引き起こす結果を鑑みるホフマンの声音は苦渋に満ち満ちていた。
ハルバートンが冷静さを失っていた事に気付けなかった事
そして、このような局面に到るまでアムロ達を有用に使えなかった事に対しても同様である。
≪アークエンジェル降下、そして直ぐに移行するであろう撤退のために貴官等に援護を頼みたい。
出撃の許可は私が出す、責任も私が負おう≫
――今更、勝手なことを!!
『主任』の怒りは当然のものだった。
今まで、再三の出撃申請を拒み続けておいて、いきなり態度を変え死地に飛び込めというのだ。
通信を今すぐ切断したい衝動を抑えるのに必死だった。
だが、彼女と異なりアムロはホフマンの意を汲んだ。
「了解しました。我々は一人でも多く月に帰すため――出撃します!!」
アムロはすぐさま了解し敬礼する。
ホフマンはアムロに対する認識はやはり誤っていたのだと気付かされる。
派閥だの風聞だのではなく先ず彼自身を見るべきだったのだ。
≪アムロ大尉、ありがとう。・・・すまなかった≫
そのまま回線は切れ、ブラックアウトした。
「そういう訳だ、出撃する。君達はどうする?初陣にはキツイものになってしまったが・・・」
アムロは振り向くとソキウス等に問いかける。
「僕達はこの日のために訓練を重ねてきました。出撃させてください」
「分かった・・・しかし、言っておくが・・・」
アムロは言葉に一拍おくと、
「君達にはまだ教えていない事が沢山残っている。――勝手に死ぬ事は許可しない」
そのアムロの言葉にイレブン達は今度こそ誰が見ても分かる静かな笑みを浮かべる。
ソキウスのナチュラルのために存在するという概念は他者に刷り込まれたものではある。
だが、決して間違ってはいないと確かにそう感じさせるものがあるのだ。
「分かりました。大尉の――大尉の命令に従います」
彼等は敬礼すると自分達の乗機へと流れていく。
「すまないな、勝手なことをしてしまって・・・」
「もう、いいですよ。きっと、貴方のそういう所にあの人も・・・」
『主任』は少し怒っている様な、それでいて喜んでいるような、そんな笑みをアムロに向ける。
「でも、無理はしないでください。我々には・・・ムルタさんには貴方が必要なんですから」
「ああ、分かった」
唐突にドレイク級護衛艦から通信が入る。
≪いけませんなぁアムロ大尉。我々の空戦隊を忘れてもらっては≫
ドレイク級護衛艦の艦長はシニカルな口調でそう口にする。
≪連合最強と名高い『白き流星』と再び同じ宇宙を飛びたがっている連中は大勢いるんだ。
この機会を逃したとあっちゃあ自分は袋叩きに遭いそうなんでね。無理矢理にでも支援させてもらう≫
遠慮してもついていきそうな勢いだ。そして、それはアムロ達の胸を打った。
「ああ、分かった。空戦隊の皆にアムロ・レイが感謝すると伝えてくれ」
互いに敬礼すると通信は切れた。だが、回線が切れてもなお繋がるものは確かに存在する。
「よし、出撃だ。下駄を出しておいてくれ!!」
第8艦隊の戦列を突破したデュエル、バスターがアークエンジェルに接近する。
≪イザーク、前に出すぎた!!俺達の任務はあくまで――≫
「うるさいっ!!」
アスランの声を遮りイザークは言い放つ。
アークエンジェルからは迎撃のためにストライク、メビウス・ゼロが出撃する。
「X-105 ストライク、メビウス・ゼロの発進を確認!!」
「この状況でか!?イザーク、ディアッカに対処させろ。アスランとニコルは戻せ!!」
「隊長、よろしいので?」
他のモビルスーツ部隊が第8艦隊の布陣の外郭を削っているなかアスラン等が突出しすぎているのは事実だ。
さらにデュエル、バスター二機はすでに奥に入り込みすぎており後退は難しい。
しかし、アークエンジェルを墜とす好機である事も確かだった。
「戦いとは敵味方共に誤謬を犯しそれが少ない方に勝利が転がり込むものだよ。
私は自分から結果の見えた間違いを犯す趣味は無い」
イザークはおそらくは止まらない。
今回は好きなようにさせる方がザフトにとってもプラスになる。
だが、大気圏突入という極限状態でストライクの、キラの存在は
アスランに対しては最悪の事態を引き起こすだけだとクルーゼは踏んだのだ。
「敵、予備戦力に動き――何かを射出している模様です!!」
先陣の艦から送信されたノイズ交じりの映像からは薄っぺらい板の両側に巨大なブースターを
取り付けたものとしか言えない物が二つ見て取れた。
「あ、待ってください・・・コレは!!敵艦からのモビルスーツ四機の発進を確認!!
ジン・タイプと思われるものが三、それに"G"と酷似したモビルスーツ――新型です!!」
「なんだと!!やはり、ヘリオポリス以外でも・・・」
――これは・・・いよいよ来るという事か、プレッシャー!!
来るべき時が来た事にクルーゼは己の戦慄と高揚を同時に認識した。