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83 ◆T6gGtxaJhA氏  『ガンダムSEED D NT's』

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第5話「開戦」


「うおおおぉっ!」

シンのインパルスがシールドを前に突き出しながら突進する。

「インパルスの機動性なら!」
「舐めるな!」

無理に攻めれば必ず隙が生じる。が、VPS装甲にはビーム兵器以外通用しない。

(もう短期決戦だ!ビームライフルにさえ気を付けてれば怖くない!)

シャアとて黙って接近を許しはしない。ビームライフル、ボルクスW、ピクウスを少しずつタイミングをずらして撃ち込むという丁寧かつ精密な射撃を見せる。
 対するシンはビームライフルこそシールドで防ぐものの、他はなりふり構わずといった感じで最小限の回避しかせず、直撃さえ防げば後はどうでも良いと言わんばかり。

「いくらシミュレーションとは言え……!」

ニヤリ。シャアが口の端を吊り上げた。いくらシミュレーションとは言えそこまでやるのならば、こちらも容赦はしない。
 インパルスがビームサーベルを抜いた。同時にゲイツRも複合兵装防盾の内蔵ビームサーベルを展開。

「ここまで接近すれば!」

もうビームサーベルの届く距離だ。機動性に優れたフォースインパルスと、若干取り回しの悪い複合兵装防盾の内蔵ビームサーベルを持つゲイツR。

(結果は見えてる。この勝負……)

「貰ったぁっ!」

ビームサーベルを叩き付けるインパルス。僅かに後退りしつつも内蔵ビームサーベルでそれを受けるゲイツR。
 シャアは考えていた。近接戦闘において不利なこのMSで勝つにはどうするか。

(やはり……)

ニヤリ。シャアが再び口の端を吊り上げた。同時にもう一度剣撃を見舞わんと迫るインパルス。

「MSの性能の違いが戦力の決定的差ではないという事を……教えてやる!」

もう一度距離を取りつつビームサーベルを受け、インパルスの真正面に立つ。

「逃がすか!」

インパルスがビームサーベルを引いた。狙うは胴体部、刺突での一撃。

(ここだ!)


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シャアはゲイツRの左足を振り上げ、同時にゲイツRの全身を右膝を基点に限界までのけぞらせた。更にスラスターを全開、同時にピクウスでインパルスのメインカメラに目眩ましをかけた。
 結果、ゲイツRは仰向けに倒れ込む様にビームサーベルを避け、更にそのままインパルスの腕を蹴り上げ、目眩ましをかけられたインパルスは一瞬標的を見失う。そして――

「なっ?!」

スラスターを全開にしたゲイツRは猛烈な勢いで体を起こし、その勢いを持って内蔵ビームサーベルをインパルスの胸部に突き立てた。

「……やられた……?」



「駄目だ!!」

オーブ代表首長カガリ・ユラ・アスハが閣議の最中に叫んだ。
反論しようとする首脳陣の面々に、カガリは更に噛みつく。

「そんなものはオーブの理念に反する!第一、只でさえ緊張状態の両陣営を刺激する様な事になったらどうする!オーブが連合に肩入れすれば連合の主戦派に拍車を掛ける事になるぞ!」

他でもない、オーブと大西洋連邦との同盟締結の話である。

(まあ、確かにその通りかな)

ユウナは一人考え込んでいた。

(ただ……)

そして、目の前の若すぎる国家元首に目を向ける。

(もしも開戦してしまったら、その時君はどうするのかな?カガリ……)

閣議が終わり、カガリは外で待つアスランと合流した。

「待たせたな」
「いや、大丈夫だ。それよりカガリ、話がある」
「話?」
「ああ、ここじゃ話し辛いんだが……」
「じゃあ屋敷に戻ろう」

公邸とは別のアスハ家の屋敷に戻ってきたカガリとアスラン。その庭で、アスランが話を切り出した。

「俺はプラントに行こうと思う」
「?!どうして……」
「一度デュランダル議長と話がしたいんだ。もうアポも取ってある」
「何を話しに行くんだ?……いや、別に直接会いに行かなくたって私を介してでも……」

いや、とアスランはカガリの言葉を遮った。


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「直接顔を合わせて話をしたいんだ。それに場合によっては……」

アスランはカガリに背を向けた。とても目を見て言えそうになかったのだ。

「俺はザフトに復隊する」
「な……?!でも、アスラン!そんな事する必要なんて無いじゃないか!どうして……?」
「まだ決めた訳じゃないよ。デュランダル議長が許して下されば、だしな。でも場合によってはそうする。俺は何が正しいのか、自分の目で見てみたいんだ」

アスランはカガリに向き直った。カガリはアスランの顔を、その目を見て理解する。

(もう決めてるんだな、アスラン……)

アスランは上着のポケットに手を突っ込んだ。そして出したその手には小さな箱。

「これを渡しておく」
「あ……指輪……」
「安物だけどな」

アスランは苦笑いすると、カガリの指に小振りな赤い石の付いた指輪を通した。

「行ってくるよ」



デュランダルは嫌気が差していた。過日のユニウスセブン落下テロにおける地球連合側の対応の余りの理不尽さに、である。
 プラント最高評議会、今その議場において連合に対する今後の対応策が練られていた。

「しかしテロリストは全員撃墜したのでしょう?今更犯人の引き渡しなど……」


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「第一今地球軍の月面基地では開戦の準備が着々と進められていると聞く。もう一刻の猶予もならんぞ」
「まさか。我々はユニウスセブンの破砕作業を率先して行い、地球を救っているではありませんか。いくら奴らとてそんな無茶は……」
「馬鹿な!そんな事を言っていては血のバレンタインの二の舞だ!」

デュランダルは溜め息を吐いた。

「皆さん」

デュランダルの声は静かだが、不思議とよく通る。

「少なくともこの件について、我々が正しいのは明白です。ならば我々はあくまでも対話の道を求めていかねばなりません。」

デュランダルは両手を広げた。プラント最高評議会議長として、一人の政治家として、自分の持ち得るカリスマを発揮する最も簡単な手法である。

「前大戦の傷もようやく癒えてきたというのに、もう一度戦争を起こす訳にはいきません。最後の最後まで、我々は平和的に事を運ぶべきなのです」

その日、連合からの要求を不当なものとして突っぱねたプラントに対して、地球連合各国はプラントを敵性国家と認定、地球連合の総意としてプラントに宣戦布告した。

そして、その一時間後――

「ジュール隊、イザーク・ジュール出るぞ!」
「同じくディアッカ・エルスマン、行くぜ!」
「シホ・ハーネンフース、ザクウォーリア行きます!」

宣戦布告からの地球連合軍の動きは非常に早く、月面基地からプラント本国へMSの大部隊が押し寄せて来ていた。

「ジュール隊各機、敵を一機も通すな!」

押し寄せる地球軍の大部隊に対して、ジュール隊を含むプラント防衛部隊の殆んどが迎撃に出た。しかし、これは地球軍の罠だった。

「隊長、司令部より通信!敵の攻撃部隊は囮、プラント本国に地球軍の核攻撃部隊が接近中との事!」
「何だと?!……ええい、ディアッカ、この場は任せる!シホ、付いて来い!」
「了解!エルスマン、頼みます!」
「あいよ、任せな!」

イザークの決断は素早かった。しかし、それでも遅すぎた。

「くっそおぉぉ……!」
(間に合わん……!)



ザフト艦隊司令部は、接近中の核攻撃部隊に騒然としていた。


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「まさか核とは……!」
「MS部隊はどうした?」
「敵の策に嵌った様で……戻るには時間がかかりすぎます!」

司令は一つ溜め息を吐いて、プラント防衛最後のカードを切った。

「止むを得ん……ニュートロンスタンピーダーはどうか」
「起動準備整っております……しかし、よろしいのですか?」
「止むを得んだろう。いかに虎の子の一発とは言えプラントが核の炎に焼かれては意味が無い」



地球連合軍核攻撃部隊の士気は、ザフトが見事策に嵌った事にうなぎ昇りだった。

「今度こそくたばれ、宇宙の化け物が!」
「青き清浄なる世界の為に!」
「化け物共に汚された宇宙を核の炎で消毒してやれ!」

核ミサイル搭載型ウィンダムの肩のミサイルケースから次々と核ミサイルが飛び出す。
 その数は凄まじく、連合の物量の多さを雄弁に物語っていた。そしてそれらのミサイルはプラントのコロニー群へと迫り――届く事なく次々に爆発していった。

「な、何だ?!何が起きた?!」
「分からん……まずい、敵MS接近!」
「何だと?!」

核ミサイル搭載型ウィンダムは核ミサイル以外に殆んど武装を持たない。つまり、奇襲もしくは味方機の援護が無ければロクに戦えないのである。

「撤退だ、撤退……」
「貴様らぁーっ!!!」

駆け付けて来た空色のスラッシュザクファントムがファルクスG7ビームアックスを構え、一振りで二機のウィンダムを薙ぎ払った。

「くそっ、ザフトめ!うわっ?!」

悪態を吐いたパイロットとその周囲のウィンダム四機にAGM138ファイヤビー誘導ミサイルが襲いかかった。
 現れたのは青紫のブレイズザクウォーリア、鳳仙花のパーソナルマークを持つシホ・ハーネンフースである。

「隊長!」
「こいつらだ!逃がすなシホ!」

イザークのザクファントムがM826ハイドラビームガトリング砲からビーム弾をばらまき、散った所をシホのザクウォーリアがビーム突撃銃で撃ち抜く。しかし……


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「数が多い!」
「このままじゃ……」

核ミサイル搭載型ウィンダムとて当然バルカンやビームサーベルといった武装は持っている。もちろんその場にいるのはジュール隊の二人だけではないが、それでも少な過ぎる。

「くそ!他のMS隊は……?!」

そのイザークの声に応える様に、通信機に陽気な声が響いた。

「こちらザフト軍『FAITH』ハイネ・ヴェステンフルス以下ヴェステンフルス隊!これより援護する!」

オレンジ色のブレイズザクファントムを筆頭に、オレンジ色のショルダーアーマーを着けたザクが多数やって来る。

「『FAITH』だと?!」
「ハイネ・ヴェステンフルス?!」

最高評議会議長直轄下の特務隊「FAITH」として、また一人のパイロットとしてハイネの名は非常に大きい。

「さあ、踊ろうぜぇ?!」
「叩き潰せ!!」

ハイネ、イザーク両名の活躍は凄まじく、またヴェステンフルス隊やシホも息の合った動きを見せ、瞬く間に凄まじい数のウィンダムが撃墜されていった。



「議長」
「ああ、もう時間か。彼の方から会いたいと言ってきてくれて助かったよ。面倒事は少なければ少ない程良い。只でさえこんな時だしね」

デュランダルはゆったりと椅子に腰掛け、来訪者の到着を待った。
 そして、執務室の扉が開いた。
 今の――英雄としての――彼は中々に魅力的だ。軍事的にも、政治的にも。時間はそう無いだろうが、必ずモノにしてみせる。

「……やあ、また会えて嬉しいよ、アスラン」

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